低平水田域の持つ洪水防水機能の定量的評価法

タイトル 低平水田域の持つ洪水防水機能の定量的評価法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2006~2007
研究担当者 吉田武郎
久保田富次郎
高木 東(鹿児島大)
松田 周(北海道農研セ)
増本隆夫
冨久尾 歩
発行年度 2006
要約 都市近郊における低平農地の持つ洪水防止機能をマクロ的に評価する方法である。この方法は,利根川水系の鬼怒川と小貝川流域に適用してその妥当性を示しているが,降雨規模と流域内土地利用情報があれば簡易に求めることができ、全国あるいは世界の大小流域に適用可能である。
キーワード 水田、洪水貯留機能、流域管理、多面的機能、モンスーンアジア、都市化
背景・ねらい  大都市圏に限らず地方の中小都市においても、かつては水田・畑として利用されていた周辺地域の都市化により、そこでの洪水危険度は益々増大していると言われている。これまで、小流域に対する洪水危険度は詳細な数理モデルを用いて評価検討してきた。しかし、その方法はデータ収集の煩雑さや解析の複雑さから大流域には適用できず、マクロスケールでの洪水危険度の増大に関する定量的な評価法や水田湛水による周辺都市部の洪水災害防止機能の評価法は必ずしも提示されてなかった。そこで、ここでは、流域レベルの洪水防止機能をマクロ的に評価する方法を提案するとともに、それらの適用例を示す。
成果の内容・特徴
  1. 広域水田の持つ保留量は、(a)土地利用の違いによる流出量や流出波形の違いとしての貯留量の変化と、(b)計画洪水時における水田地帯が持つ遊水地機能としての洪水貯留量に分けられる。さらに、それぞれは流域内で一様でなく空間的な分布を持つ。
  2. 代表的地目として、森林、水田、都市域を考え(例えば、表1)、地目別流出量として、指数関数で関数近似化された流出量ハイドログラフ(1式参照)を用いる。図1は、昭22年カスリン台風時前橋3日雨量を使用した各地目域と全流域からの算出例である。
  3. 都市河川の流下量と都市近郊水田の洪水防止能力の関係は排水(通水)能力と貯留能力の関係と言い換えることができる。貯留能力Sは、関数近似された各地目からの流出量の合成ハイドログラフに対する、最大排水量Qdr以上の値の総和として求まる(図1)。そこで、貯留可能量Sは2式で表せる。また、両者の関係をマクロ的に示すと3式の表現となる。
  4. ある流域には、ある確率規模の洪水に対してQdrを様々に変化させることにより1本の曲線が描ける。また、確率年を変化させると、曲線は図2のように上下に移動する。治水計画の基本となる昭和22年のカスリン台風の雨量に対して、上記の方法を利根川水系鬼怒川流域に適用した結果を図2の点線で示した。また、その雨量に対して、現時点での通水能力と農地(水田域)の貯留機能の関係は図中の×印の点で示せる。同様に、同図の実線は利根川下流における各種計画雨量(独自推定値)に対する曲線群である。
  5. 1961年の小貝川の大氾濫(図3)を用いて、上記推定法の妥当性を検討した。上流側①~⑦の地点での堤防上越水量と下流2地点(赤浜(B)と豊田(A))での破堤氾濫量を提案方法による推定量と比較検討し、その妥当性を示した。
成果の活用面・留意点
  1. 上記2.で利用するピーク流量Qpとピークまでの時間tpは合理式と洪水到達時間推定式を用いて簡単に算定できる。この波形は、ピーク流量、総流出量(=有効雨量:重要)、各地目面積、流出遅れ時間の関数となる。ピーク流出量は単位面積当たりの値で降雨流出モデルあるいは合理式を用いて算定することができる。
  2. ここでの洪水防止機能の推定値は、下流都市域に隣接する水田地帯がポテンシャルとして持つ洪水防止機能の評価結果である。
図表1 228101-1.gif
図表2 228101-2.gif
図表3 228101-3.gif
図表4 228101-4.gif
図表5 228101-5.gif
カテゴリ 水田 評価法

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