タイトル |
水質改善シナリオ評価のための流域水質予測モデル |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2002~2006 |
研究担当者 |
髙木強治
R. K.(JSPS特別研究員)
Y. W.(JSPS特別研究員)
Feng
Singh
吉永育生
三浦麻(JST重点研究支援協力員)
人見忠良
長谷部均
白谷栄作
濵田康治
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発行年度 |
2006 |
要約 |
本モデルは公共用水域の水質保全のための流域水質予測モデルである。国土数値情報による土地利用データを利用し、水と負荷物質の循環過程をメッシュベースでモデル化する。本モデルでは、都市排水を農業用水に混入させて水田の水質浄化機能を活用する等の水質改善シナリオについて、その効果を流域レベルで定量的に評価することができる。
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キーワード |
国土数値情報、土地利用、メッシュモデル、農業用水、都市排水、シナリオ
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背景・ねらい |
農村流域では、代かき後の水田排水や降雨に伴う畑地からの肥料溶脱が問題となる一方、水田の水質浄化機能の活用に注目が集まっている。また、都市排水は農業用水汚濁の原因と指摘される一方で、水資源としての有効利用も期待されている。したがって、農村流域では、これら流域全体の水・物質循環を考慮した水質改善シナリオを検討する必要がある。 そこで本研究では、国土数値情報の土地利用データに基づいたメッシュベースの流域水質予測モデルを開発する。さらに、都市排水を農業用水に混入させて水田の水質浄化機能を活用する水質改善シナリオを描き、その効果を定量的に評価する。
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成果の内容・特徴 |
- 愛知県油が淵流域の水質環境にかかる流域情報(1995年時点)をデータベース化し、流域水質を予測評価するメッシュモデルを構築した(図1)。
- 各メッシュからの流出は、土地利用状況をパラメータとする1段タンクモデルで表現した。水田には、脱窒による負荷減衰や内部生産による有機物変動を考慮した負荷変動モデルを導入した。排水路や河川のモデルは、メッシュモデルにオーバーレイさせて配置し、メッシュからの流出がそれらのノードに流入するような構造とした(図1)。
- 現況の水質変動の再現性を検証した後、流域の水質を改善するための政策シナリオを描き、モデル計算によってその効果を検証した(表1)。灌漑期に都市排水を農業用水に混入させる場合、水資源の有効利用の観点から、都市排水の混入に伴う灌漑用水量削減の有無、水稲への影響を考慮して、都市排水混入の際の全窒素濃度制限の有無を条件として組み込んだ。さらに、施肥量の削減が流域水質に与える影響を分析した。
- 流域最下流の全窒素については、都市排水を優先して水田に導水するシナリオ1と2の年平均の濃度低下が13~14%と大きく、全窒素濃度を3.0 mg/l以下に制御したシナリオ3~6のそれは5~8%程度にとどまった(図2)。月平均値に着目すれば、濃度が最も低下する8月において、シナリオ1と2で60%、シナリオ3と5で30%、シナリオ4と6で25%程度の全窒素が低下した(図3)。
- 流域の水質環境は、水田の水質浄化機能や明治用水による希釈効果によって、維持・改善されていることが確認されたが、穂肥の2割削減による水質への影響は、ほとんど現れなかった。
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成果の活用面・留意点 |
- 提案された流域水質解析モデルは、国土数値情報の土地利用データを利用しているので、モデル化に必要な流域情報の入手が容易で汎用性が高い。
- 対象流域では水田が60%余りを占めるので、水田の負荷減衰機能や内部生産機能のモデル表現に特に注意を払ったが、農地に占める畑地の比率が多い流域では、畑地内の物質変化と負荷流出を表現するモデルの高精度化を進める必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
水田
施肥
データベース
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