タイトル |
地下水流向観測と水収支解析による台地小流域の地下集水域の特定法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
吉田武郎
増本隆夫
堀川直紀
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発行年度 |
2008 |
要約 |
地表と地下の集水域が異なる台地小流域において、地下水流向観測と長期流域水収支解析を統合して地下集水域を特定する手法である。本方法により台地小流域の水収支特性把握と流出モデル化が可能となり、安定的に確保可能な水資源を定量的に評価できる。
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キーワード |
洪積台地、地下集水域、地下水流向・流速測定、水収支解析≒
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背景・ねらい |
洪積台地上で大規模な畑作を安定的に行うための灌漑計画策定には台地の水収支特性解析が不可欠であるが、洪積台地は山地流域に比べて流域界が不明瞭であること、地下貯留変動量が大きいこと等により、水循環機構、水収支特性の把握が困難である。他方、鹿島台地小流域では地表集水域より地下集水域が大きく両者の差が水収支に大きな影響を持つことが明らかになっている。本方法では、地下水流向・流速観測と長期流域水収支解析によって、地表と地下の集水域が異なる流域の地下集水域面積および位置を推定する。
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成果の内容・特徴 |
- 流域地形図と踏査により試験観測流域の地表集水域界を決定し、降水量、流出量の観測および蒸発散量・水田への揚水量の推定を行う。また、試験観測流域外に、地下水位の長期観測と地下水の流向・流速を行うための観測孔を4本(Ko-1、2、3、4)設置する(図1)とともに、流域周辺の既存の井戸の諸元(井戸深度、ストレーナ区間、揚水量等)を踏査し、地区の地下水面形を推定する(図2)。
- 2005年11月~2006年11月に4回(地下水位最高期、最低期、上昇期、下降期)の地下水流向・流速を観測した(図3はそのうち2例)。地下水面より推定される地下水分水嶺上に位置する観測孔(Ko-2)の地下水流向は周囲の地下水位との関係によって変化するが、その他の観測孔の地下水流向により、地下集水域に含まれるか否かが判断できる。得られた地下水の流向と前項で推定した地下水面形を併せ、地下水等高線に直交するように地下集水域界を描く(図2、地下集水域の面積は地表の1.65倍)。
- 水収支式G-ΔS=D+Ea-R-Irにより、2001~2006年の流域水収支を計算する。ここでG:地下水流入量、ΔS:地下貯留変化量、D:流出量、Ea:蒸発散量、R:降水量、Ir:灌漑揚水量。さらに、年基底流出量(各月の最低流出量の年積算値)が帯水層からの流出であり、この年基底流出量と地下集水域の面積が比例すると仮定することで、以下により地下集水域の面積を推定する。
推定された地下集水域の面積(表1の最右列)は年ごとに変動するが(地表集水域の1.2~2.4倍)、その平均は地下水調査により特定された値と同等(同1.67倍)であり、地下貯留変化量△Sを考慮すれば、推定される地下集水面積の変動は小さくなる。
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成果の活用面・留意点 |
- 地表・地下集水域の不一致は鹿島台地、下総台地等の洪積台地小流域で観察されており、これらの台地小流域の水収支解析を行う場合に本方法の適用が期待される。
- 地下水流向・流速観測を行わず地下集水域の面積を水収支から推定する場合には、複数年の観測を継続して行い、その平均を地下集水域の面積とすることが望ましい。
- 地表と地下の流域面積が異なる台地流域の流出モデル化は困難であるが、両者の面積の違いの定量的な把握は、モデル構築のために有用な情報である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
水田
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