タイトル |
海洋鉄散布による二酸化炭素固定化と生物群集の応答に関する研究 |
担当機関 |
北海道区水産研究所生物環境研究室 |
研究期間 |
2001~2003 |
研究担当者 |
津田 敦(生物環境研究室)
|
発行年度 |
2001 |
要約 |
急激に増加する大気中の二酸化炭素を除去する手法として海洋鉄散布により植物プランクトンに吸収させる計画が考えられている。鉄散布の海洋生態系への影響は未知であるため、海洋実験により影響を把握して正確な科学的知見を得ることにより、水産のみならず地球環境問題へ貢献する。
|
背景・ねらい |
地球温暖化の原因である二酸化炭素を取り除くため、鉄濃度が低い海域に鉄を撒き、植物プランクトンを増殖させて吸収させる計画がある。しかし、鉄散布が海洋生態系へ与える変化については未知であるため、実験により明らかにした。
|
成果の内容・特徴 |
- 実験は、鉄濃度が低いために植物プランクトンが増殖できないサハリン東部海域で世界で初めて行った。
- 硫酸鉄溶液を8×10km四方に約1日かけて散布した(25mプールに耳かき一杯程度)。
- 散布域を追跡しながら、鉄濃度、水中二酸化炭素分圧、植物プランクトン、動物プランクトンなどの変化を追った。
- 光合成活性は3日目に上昇し、植物プランクトンは6日目から増加が明白となった。
- 9日目以降はクロロフィルa濃度(植物プランクトン量の目安)が20mg/m3と非常に高くなった。これは、同じく鉄が少ない南極や赤道海域での実験に比べ10倍高い。
- 植物プランクトンが増え、海水中の栄養塩と二酸化炭素分圧は大きく減少した。
- 散布域ではキタノホッケ幼魚が採集された。
- この結果、北太平洋は世界でも最も鉄添加に敏感に反応する海域であることが判明した。
- これには、珪藻1種(Chaetoceros debilis)が特異的に増殖した(最大1日3分裂)ことが寄与していた。
|
成果の活用面・留意点 |
- 日本の研究グループとして、初めて海洋制御実験に成功し、今後の実験の基礎を築いた。
- 赤道や南極での実験と異なり、大規模な植物プランクトンの増殖が引き起こされ、環境技術としての可能性が示唆された。
- 同時に、鉄散布が海洋生態系に影響を及ぼすことが示された。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
カテゴリ |
|