沖合域における流出油汚染を指標するプランクトンの特定

タイトル 沖合域における流出油汚染を指標するプランクトンの特定
担当機関 (独)水産総合研究センター 日本海区水産研究所
研究期間 2000~2001
研究担当者 井口直樹(生物生産研究室)
黒田一紀(元 日水研)
森本晴之
発行年度 2001
要約 タンカー沈没による重油流出海域の動物プランクトン、オキアミ・ヤムシ類から鉱油成分が高濃度に検出され、体内に油粒を保有するヤムシの出現率が流出後に約4倍に増加したことから、流出油汚染の指標群としてオキアミ・ヤムシ類が有用であることが判明した。
背景・ねらい 1997年1月に隠岐島北東で発生したロシア船籍タンカー「ナホトカ号」の破断・沈没によって流出した大量の重油は、日本海沿岸域の環境や漁業等に甚大な被害を与え、水深2,500mに沈没した船尾部には約1万klの重油が残存し、現在もその一部が漏出し続けている。海水中の油は主にバクテリアによって分解消失するとされているが、食物連鎖によってより高次の生物へ移行する可能性があり、生態系への長期的な影響が懸念される。本研究では、食物連鎖の基盤となる動・植物プランクトンの体内への蓄積程度を把握し、流出油汚染の指標群を特定することを目的とした。
成果の内容・特徴
  • 2000年6月の重油流出海域(図1, St.S1)と対照海域(図1, St.OK1, T3)のプランクトンの含有油分濃度をサイズ別に比較した結果、0.1~0.5mm(植物・微小動物プランクトン)及び0.5~3.0mm(小型動物プランクトン)では同レベルであったが、サイズ3.0mm以上(オキアミ・ヤムシ類主体の大型動物プランクトン)では、重油流出海域の個体は分析したすべての多環芳香族炭化水素で対象海域の個体より高い傾向がみられた(表1)。
  • 重要な餌料生物であるオキアミ類について、2000年4月の沈没地点北海域(図1, St.6, 8, 10)と秋田・青森沖合域(図1, St.3, 21, 23)の試料で含有油分濃度を比較した結果、前者の個体が高い傾向がみられた(表1)。
  • 福井県沖から大和堆に至る海域(図1, St.PM1~9)のヤムシ類の体内に油粒が蛍光顕微鏡下で観察され、その平均出現率が流出事故前後の3年間で、それぞれ0.7~1.2%から2.9~4.7%と流出事故後に約4倍に増加した(表2)。
  • 油粒を保有したヤムシ類4種のうち、特にSagitta pacificaの出現率が毎年最も高く、油粒に対する特異な嗜好性の存在が示唆された(表2)。
成果の活用面・留意点 オキアミ・ヤムシ類が比較的多くの鉱油成分を保持したことは海水中の鉱油の存在の指標種として有用である。これらは魚類・イカ類の重要な餌であり、生態系の中で食物連鎖を通して高次生物への流出油の移行が懸念され、これら生物の残留油量を長期モニターすることが重要である。
図表1 229203-1.gif
図表2 229203-2.gif
図表3 229203-3.gif
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