モンスーンアジアの水田灌漑管理の実態に基づく段階的な水利用向上対策

タイトル モンスーンアジアの水田灌漑管理の実態に基づく段階的な水利用向上対策
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2006~2008
研究担当者 堀川直紀
増本隆夫
吉田武郎
発行年度 2009
要約 モンスーンアジア地域の水田灌漑管理の実態に基づいた地区レベルの灌漑管理への対策である。低平地水田を含む多様な灌漑地区に適用できるとともに、段階的な配水操作等の改善方式を見いだすことができる。
キーワード 灌漑、用水管理計画、配水操作、低平地水田、灌漑効率
背景・ねらい 水稲はモンスーンアジアの主要な農作物であるが、多くの地域で乾季及び雨季の無降雨期では灌漑用水量が生産の制約条件となっている。このため、水資源の開発とともに水田灌漑の効率的な水利用のために灌漑管理の改善が望まれている。一方、灌漑用水の管理は属地的性格が強く、各灌漑地区で独自に運用されていることから、技術の共有が必要である。そこで、日本を含むモンスーンアジアの水田灌漑地区の地区レベルの灌漑管理の調査・解析より管理実態を明らかにして、効率的な水利用を実現させるための特徴的な改善法を提案する。これらの提案には低平地水田に見られる洪水等を利用した地域特有の灌漑管理における改善も含まれている。また、本地域では自然条件の違いは小さいが、多様な灌漑管理手法が用いられている。これらのうち優れた手法は事例として紹介することで他の灌漑地区へ適用が期待される。
成果の内容・特徴
  1. 対策の内容は、用水管理計画、配水計画、配水操作、末端水路管理、施設改良等の改善法である。灌漑管理のための技術、組織や資金等の社会的要因が国および地域で大きく異なるため、様々な灌漑地区に対応するように複数の改善案を示すとともに段階的に改善することを提案している。これらの提案は、4ヶ所の水田灌漑地区(図1)において実用性の検討がなされている。提案した改善法のうち、モンスーンアジアの水田灌漑地区に特徴的な灌漑管理に関しては次の事項がある。
  2. 自然流下灌漑地区で実施されている配水操作方法を分類する(表1)。配水は需要変動に対応して流量により管理することが望ましいが、多くの地区で実施されておらず灌漑効率の点から改善の余地が大きい。これを一挙に改善するのではなく、社会的要因を考慮したステップ1からステップ4までの段階的な改善を提案する。
  3. 低平地水田では自然の洪水または人為的な堰上げによって河川水を直接周辺の水田に引き入れる灌漑が広く行われており、様々な名称で呼ばれている。これを水位制御期間から4つに類型化する(表2)。類型に分類することにより当該灌漑地区の改善点が明確となり、施設改良もしくは用水管理計画の変更により水位制御期間すなわち灌漑期間を拡大し生産を向上させることができる。
  4. 貯水池の容量が灌漑面積に比較して小さく水田二期作が実行できない貯水池灌漑地区が多く見られる。乾季灌漑期前の用水管理計画策定における対策として作付面積、作目、作付時期、栽培方法の変更を検討できる(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 策定した対策は、モンスーンアジアにおける水田灌漑地区における地区レベルの灌漑管理による灌漑効率の改善を含む水利用向上の実現に利用できる。
  2. 水利用向上のための対策の実施にあたっては社会的要因を考慮することが重要である。
図表1 233985-1.png
図表2 233985-2.png
図表3 233985-3.png
図表4 233985-4.png
カテゴリ 水田 水稲 水管理

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