黒ボク土畑におけるメタン発酵消化液由来窒素の動態

タイトル 黒ボク土畑におけるメタン発酵消化液由来窒素の動態
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2007~2011
研究担当者 中村真人
藤川智紀
柚山義人
山岡 賢
前田守弘
折立文子
発行年度 2009
要約 メタン発酵消化液は、施用後速やかに土壌と混和すれば、畑地において硫安よりやや劣る程度の速効性窒素肥料として利用できる。消化液由来窒素は、硫安由来窒素と同様の溶脱特性を示す。一方、硫安を施用した場合と比較して亜酸化窒素発生量は増加する。
キーワード メタン発酵消化液、黒ボク土、窒素溶脱特性、亜酸化窒素
背景・ねらい メタン発酵消化液(消化液)は、メタン発酵においてメタンガスと同時に生成される液体であり、肥料成分を含むため、液肥としての利用が期待されている。しかし、消化液を土壌表面に施用するとアンモニア揮散が生じ、肥料成分が損失する。アンモニア揮散を抑制するためには、消化液を施用後速やかに土壌と混和する施用方法(混和施用)が有効とされているが、その場合の土壌中における窒素の動態に関する報告は少ない。そこで、ライシメータ試験(充填土壌 淡色黒ボク土、深さ1m)により、消化液を混和施用した時の窒素溶脱特性、表層土壌からの亜酸化窒素(N2O)発生特性について明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 試験は、消化液を2年間連用し作物(春作・夏作:コマツナ、秋作:ホウレンソウ)を6作栽培した条件で行う。施肥量は千葉県の施肥基準に従い、窒素施用量は全窒素ベースで合わせる。用いた消化液は主原料が乳牛ふん尿の中温発酵のプラントのもので、全窒素は3,450mgL-1、含有する窒素の約半分がアンモニア態窒素である(表1)。
  2. 消化液を混和施用することによりアンモニア揮散が抑制され、また、有機態窒素は少なくとも半分程度が無機化する。その結果、硫安よりやや劣る程度の速効性窒素肥料として利用できる(図1)。
  3. 消化液、硫安を混和施用した場合、ライシメータ下部からの浸透水の全窒素(ほぼすべてが硝酸態窒素)は、施肥をしなかった場合に比べて高い値で推移し、両資材を施用した場合の全窒素の推移はほぼ同様である(図2)。消化液に含まれるアンモニア態窒素と施用後速やかに無機化する窒素は、硫安由来の窒素とほぼ同様の溶脱特性を示すといえる。窒素溶脱量は消化液由来の有機態窒素の無機化量を反映して、消化液を施用した場合の方がやや少ない(図1)。
  4. 消化液区では施用直後のN2O発生量が硫安区に比べて大きく、結果としてN2O排出係数は、消化液区の方が有意(5%水準)に高い(図3)。混和施用することにより、消化液を硫安に近い速効性窒素肥料として利用できる反面、N2Oの発生量は硫安を施用した場合と比べて増加する。
成果の活用面・留意点
  1. 消化液を黒ボク土に施用する場合の基礎資料となる。
  2. 既往の研究により、消化液施用後速やかに土壌と混和することによりアンモニア揮散が抑制できることが報告されており、今回の実験でも揮散量は少ないと判断される。
  3. 本成果は、可給態窒素水準の高い土壌での実験結果である。
  4. 消化液はリン酸が不足しているので、必要に応じて不足分を補う必要がある。
  5. 消化液を混和施用した場合、圃場レベルでは温室効果ガス排出量は化学肥料を施用した場合に比べて増加するが、メタン発酵を行うことによる排出削減効果がある。そのため、温室効果ガス排出量の評価は、メタン発酵システム全体で行う必要がある。
図表1 234000-1.png
図表2 234000-2.png
図表3 234000-3.png
図表4 234000-4.png
図表5 234000-5.png
図表6 234000-6.png
カテゴリ 肥料 こまつな 施肥 乳牛 春作 ほうれんそう メタン発酵消化液

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる