イネ品種「初山吹」由来の新規アルカロイドoryzamutaic acids B~Gの構造

タイトル イネ品種「初山吹」由来の新規アルカロイドoryzamutaic acids B~Gの構造
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
研究期間 2006~2009
研究担当者 中野 洋
小瀬村誠治
吉田 充
鈴木利貞
岩浦里愛
梶 亮太
坂井 真
広瀬克利
発行年度 2009
要約 oryzamutaic acids B~G(2~7)は、イネ品種「初山吹」の胚乳に含まれる特異な含窒素複素環骨格を有する新規アルカロイドである。
キーワード 水稲、初山吹、アルカロイド、oryzamutaic acids B~G
背景・ねらい 九州沖縄農業研究センターは、イネ品種「キヌヒカリ」にγ線を照射することで突然変異を誘発させ、胚乳が黄色を呈する品種「初山吹」を育成した(平成20年度研究成果情報)。「初山吹」は、その呈色から識別性を必要とする飼料米、酒造用掛米、黄色素原料などへの利用が期待されている。近年担当者らは、「初山吹」の胚乳より、新規黄色素oryzamutaic acid Aを単離した(平成20年度研究成果情報)。oryzamutaic acid A(1)は、特異な含窒素複素環骨格を有するため、その生合成の点から非常に注目されている。本研究では、「初山吹」胚乳由来の黄色素に関する研究の一環として、その胚乳に含まれる未知成分の同定を行う。
成果の内容・特徴
  1. oryzamutaic acids B~G(2~7)は、「初山吹」の胚乳(精米)をメタノール水溶液(MeOH/H2O, 1:9)で抽出し、その抽出物をC18カラムおよびC18 HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分離・精製することにより単離される。
  2. oryzamutaic acids B(2)およびC(3)の分子式は、HRESIMS(高分解能エレクトロスプレーイオン化質量分析)の結果より、C17H23N3O4(不飽和度が8)である。これらは、13C NMR(核磁気共鳴)およびDEPT(Distorsionless Enhancement by Polarization Transfer)135スペクトルの解析結果より、2個のカルボニル基を含む4個の4級炭素、7個のメチン炭素、および6個のメチレン炭素からなる17個の炭素を持つ。またoryzamutaic acids D~G(4~7)の分子式は、C17H25N3O4(不飽和度が7)である。これらは、2個のカルボニル基を含む4個の4級炭素、5個のメチン炭素、および8個のメチレン炭素からなる17個の炭素を持つ。
  3. oryzamutaic acids B(2)およびC(3)の構造および相対立体配置は、1D NMR(1H NMR、13C NMR)および2D NMR(1H-1H DQFCOSY、HSQC、HMBC、NOESY)スペクトルの解析結果より、それぞれ図1の2および3である。またoryzamutaic acids D~G(4~7)の構造および相対立体配置は、それぞれ図1の4~7である(oryzamutaic acid E(5)は単結晶X線構造解析の結果により推定)。
  4. oryzamutaic acids A~C(1~3)はC-7とC-8、N-3とC-13、およびC-5とC-6間の二重結合を有し黄色であるが、oryzamutaic acids D~G(4~7)はC-7とC-8間の二重結合がなく無色である(図1)。
  5. oryzamutaic acid A(1)およびoryzamutaic acids B~G(2~7)は、それぞれ4および3分子のアミノ酸から生合成されると考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. oryzamutaic acids A~G(1~7)の生合成に関する研究や「初山吹」の胚乳の安全性および機能性に関する研究における基礎的な知見として利用できる。
  2. oryzamutaic acid E(5)の単結晶X線構造解析データは、Cambridge Crystallographic Data Centre, 12 Union Road, Cambridge CB2 1EZ, UK (Fax: +44-1223-336-033; e-mail:deposit@ccdc.cam.ac.uk)から無料で得られる(CCDC 746590)。
図表1 234132-1.png
カテゴリ 機能性 水稲 品種

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる