タイトル | 農耕地から発生する亜酸化窒素の削減効果を定量的に評価 -硝化抑制剤入り肥料の平均的な削減率は-38%- |
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担当機関 | (独)農業環境技術研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
秋山博子 八木一行 Xiaoyuan Yan |
発行年度 | 2009 |
要約 | 農耕地から発生する亜酸化窒素の削減技術に関する圃場試験の文献値を収集し、統計解析を行いました。その結果、慣行肥料と比較した平均的な削減率は硝化抑制剤入り肥料で-38%、被覆肥料で-35%であることを明らかにしました。 |
背景・ねらい | 農耕地は亜酸化窒素(一酸化二窒素:N2O)の主要な発生源であるため、その発生量を削減することは地球温暖化緩和に重要な課題です。IPCC の報告書においては、硝化抑制剤入り肥料(1)や被覆肥料(2)などの施肥法の改善による亜酸化窒素の削減率を-30%と推定していましたが、その根拠となる具体的なデータは現在までありませんでした。このため、これらの技術による削減効果の定量的な評価を行うことを目的としました。 (1)硝化抑制剤入り肥料:肥料中のアンモニアが土壌微生物の働きにより硝酸に変化する過程である「硝化」を抑制する薬剤を添加した肥料。硝化の過程からもN2Oが発生するため、硝化を抑制することでN2Oの発生を抑制すると考えられています。 (2)被覆肥料:肥料成分を樹脂などでコーティングすることにより肥料成分がゆっくりと溶出する肥料。作物による窒素の利用効率を上げることにより、N2Oの発生を抑制すると考えられています。 |
成果の内容・特徴 | 削減技術の評価においては圃場試験が基本となりますが、圃場試験では気象や土壌条件により削減効果が大きくばらつくため、平均的な削減率を得ることは困難です。このため、圃場試験の文献値を収集し、統計解析を行うことにより、平均的な削減効果の評価を行いました。その結果、硝化抑制剤入り肥料の平均的な削減率は慣行肥料の-38%(図2)であり、様々な環境の圃場試験においても比較的安定した削減効果がみられることが明らかになりました。一方、被覆肥料の平均的な削減率は-35%ですが、土壌により削減効果が大きく異なりました。すなわち、重粘な土壌での削減効果が大きい一方で、日本の畑土壌の約半分を占める黒ボク土では明瞭な削減効果がみられませんでした(図3)。 この成果は農耕地におけるN2O の削減ポテンシャルについて初めて定量的に評価したものであり、地球温暖化防止施策への貢献が期待されます。 |
成果の活用面・留意点 | 本研究の一部は環境省地球環境研究総合推進費S2-3a (SSCP) 「農業生態系におけるCH4, N2Oソース抑制技術の開発と評価」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 肥料 くり 施肥 ばら 薬剤 |