タイトル |
野生稲Oryza officinalisの早朝開花性を利用した開花時高温不稔の回避 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所 |
研究期間 |
2008~2010 |
研究担当者 |
石丸 努
平林秀介
井田 仁
高井俊之
荒井裕見子
吉永悟志
安東郁男
小川紹文
近藤始彦
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発行年度 |
2010 |
要約 |
野生稲O. officinalisの早朝開花性を導入した種間交雑系統では、親品種のコシヒカリに比べて開花時刻が2-3時間早まることにより、開花時の気温が35℃以上で発生する高温不稔を回避することができる。
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キーワード |
イネ、高温不稔、コシヒカリ、早朝開花性、O. officinalis
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背景・ねらい |
イネは開花時に35℃以上の高温ストレスにさらされると、葯の裂開や花粉の飛散が不良となり不稔となる。温暖化の進行により、熱帯地域のみならず、我が国でも、今後高温不稔による減収が懸念される。高温不稔軽減の方策として、早朝開花性の導入により、気温が低い時間帯に開花させる回避型育種が提言されてきた。 そこで、野生稲O. officinalisの早朝開花性をコシヒカリに導入した種間交雑系統を用い、開花時の高温不稔を回避できるかどうかを検証する。
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成果の内容・特徴 |
- 水稲品種「コシヒカリ」と早朝開花性のO.officinalisを種間交雑した系統(農林29号 (4x)/O. officinalis//コシヒカリ 、以下早朝開花系統)を、日中の最高気温が31℃程度の網室と39℃程度になるガラス温室(表1)で栽培すると、両系統ともガラス温室では網室より1時間程度早く開花する(図1)。ガラス温室ではコシヒカリで10-13時に開花し、35℃以上の高温に曝されるのに対して、早朝開花系統では7-10時に開花し、その時点の気温は35℃以下となる。
- 網室では、コシヒカリと早朝開花系統とも不稔率は10%以下である。一方、ガラス温室では、特にコシヒカリで開花時刻が遅い籾ほど、著しく不稔率は増加する。早朝開花系統では、コシヒカリに比べて不稔発生が軽減される(図2)。
- 両系統とも、開花時に38℃の高温処理を行うと60%程度の不稔が発生する。しかしながら、少なくとも開花終了1時間後から38℃の高温処理を行っても、ほとんど不稔は発生しない(図3)ことにより、両系統の高温不稔耐性は同等と考えられる。
- 以上より、日中高温条件下で早朝開花系統の高温不稔発生が軽減されるのは、コシヒカリとの高温不稔耐性の違いによるものではなく、開花時刻が早いことにより、気温が低い時間帯に開花できるためであると考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 本実験で用いた早朝開花系統は、高温不稔の回避型品種育成の母本として有用である。
- 1/5000aのワグネルポット試験の結果であり、圃場での検定は行っていない。
- 本実験で用いた早朝開花系統は、2次枝梗着生籾の不稔率がコシヒカリに比べて著しく高いため、実験には1次枝梗着生籾のみを供試した。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
育種
水稲
品種
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