タイトル |
メタン発酵消化液の脱水ろ液中のアンモニア性窒素の抽出ならびに濃縮 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2007~2010 |
研究担当者 |
山岡 賢
柚山義人
中村真人
清水夏樹
折立文子
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発行年度 |
2010 |
要約 |
メタン発酵消化液の脱水ろ液を全還流蒸留することで、同液中のアンモニア性窒素を効率的に抽出でき、二酸化炭素ガスと反応させることでアンモニア性窒素を大幅に濃縮できる。
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キーワード |
メタン発酵消化液、脱水ろ液、アンモニア性窒素、全還流蒸留、二酸化炭素
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背景・ねらい |
メタン発酵消化液(消化液)は、液肥として利用することが望ましい。しかし、消化液の約95%は水分でかさばり、保管、輸送や農地施用に労力やコストを要し問題である。 このため、減量化が求められるが、一般的な減量化技術である固液分離を消化液に施しても、固液分離した液分である脱水ろ液にアンモニア性窒素が約1,000mg/Lと高濃度に残存する。このため、さらに水処理プロセスなどを適用しないと、脱水ろ液を放流等処分できないため減量化が果たせない。本研究では、脱水ろ液の減量化の第1段階となる脱水ろ液からアンモニア性窒素を抽出・濃縮する技術を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 減圧蒸留装置(図1)で、減圧(27.5kPa)して蒸発器内の脱水ろ液を加熱・沸騰させて、下部コンデンサーで30℃に冷却し、凝縮液を全量蒸発器に戻す全還流蒸留を繰り返すと、蒸発器内の脱水ろ液のアンモニア性窒素濃度は、初期濃度910mg/Lが150分間に70mg/Lとなり、約8%まで大幅に低下し、脱水ろ液からアンモニア性窒素を効率的に抽出することができる(図2)。一方、脱水ろ液を加熱・減圧しつつも沸騰させず、還流させない条件(「未還流」:27.5kPa、65.0℃)で減圧蒸留装置を運転する場合、蒸発器内の脱水ろ液のアンモニア性窒素濃度は、初期濃度742mg/Lが150分後においても688mg/Lと約7%の低下にとどまる。
- 減圧蒸留装置に二酸化炭素ガスを充填の上、蒸発器に約20Lの脱水ろ液を注入し、装置内を27.5kPaに減圧して、全還流蒸留を行い、装置運転中も下部コンデンサーの上部から二酸化炭素ガスの注入(0.3L/min)を行うと、アンモニア性窒素濃度は二酸化炭素ガスと反応し、上部コンデンサー(20℃)及び周辺に白色物質が生成する(図3)。
- 生成物の現物中の窒素及び炭素の含有量を測定すると、運転毎に異なるが、窒素は3.6から16.8%(平均11.3%)、炭素は3.2から14.8%(平均9.7%)の値がそれぞれ得られ、化学肥料に匹敵する高い窒素含有量に濃縮されている。
- この生成物は水溶性であり、同水溶液はpH9.5程度の弱アルカリ性を示し、イオンクロマト分析ではアンモニウムイオン濃度が卓越するため、生成物は炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等と考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 本技術に要するコストは、メタン発酵施設で余剰になる際のバイオガスや熱を加熱源として有効利用を図り低減に努めるなど、今後検討が必要である。
- 本技術によるアンモニア性窒素の回収率は現状では20%程度以下で、回収率の向上のために装置の運転条件等の改善が今後必要である。
- 本技術による生成物は、窒素肥料代替効果が期待されるが、今後の検証が必要である
- 脱水ろ液の減量化には、本技術に付随する水処理や蒸留等のプロセスが必要である。
- 本技術で必要となる二酸化炭素ガスは、バイオガス中の二酸化炭素ガスの利用が想定できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
コスト
メタン発酵消化液
輸送
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