タイトル |
国産めん用小麦の主要赤かび病毒素の製粉前後での動態解析 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
久城真代
岡留博司
長嶋 等
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発行年度 |
2010 |
要約 |
国産めん用小麦1品種を用いた主要赤かび病毒素デオキシニバレノール(DON)およびニバレノール(NIV)の製粉前後の動態解析の結果、原粒の汚染度の違いにより製粉後の上質粉(ヒトの可食部)への毒素の移行度が異なる。
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キーワード |
小麦、赤かび病、デオキシニバレノール、ニバレノール、製粉
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背景・ねらい |
赤かび病は、穀粒の減収のみならず穀粒中に赤かび病毒素デオキシニバレノール(DON)、ニバレノール(NIV)蓄積をもたらすことがある。小麦の開花期と降雨期が重なりやすいわが国では生産段階で赤かび病を完全に防除することは困難である。一方、国産小麦中のDONの製粉工程での動態データは少なく、NIVはさらに情報が少ない。小麦加工段階での赤かび病毒素の動態解析を行うことにより、リスク管理に必要な科学的知見の提供ならびに加工段階での汚染リスク低減技術の開発を目指す。今回、汚染度の異なる国産めん用小麦の製粉前後の毒素の動態を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- DON/NIV 同時分析法は、DON試験法(厚生労働省通知法、食安発第0717001号、平成15年7月17日)に準じた方法である。各製粉分画においてDONの暫定基準値(1.1ppm)近くの1.0ppmを含めた3水準の添加回収率は70-120%の範囲内であり、併行精度は10%以内である(表1)。
- 九州沖縄農研にて人工的に毒素産生性のフザリウム属菌を接種して栽培した、めん用の軟質小麦品種であるチクゴイズミを用いた。ビューラー社のテストミルを用いて5kgスケールで試験製粉を行い、六種類の粉(1B~3B, 1M~3M:番号が小さいほど上級の粉)と二種類のふすま(大ふすまと小ふすま)を得た。1B, 1M, 2B, 2Mを混合して上質粉(=ヒトの可食部)を、また3Bと3Mを混合して末粉を調製した(図1)。
- 原粒ならびに調製した製粉分画(上質粉、末粉、大ふすま、小ふすま)のDON/NIV含量は、低汚染粒の製粉では、上質粉でのNIV濃度は原粒より低濃度でほぼ半減しており、製粉による減毒効果が認められる(表2)。一方で中汚染(暫定基準値近く)粒の製粉では、上質粉でのDON/NIV濃度は原粒と同程度であり、毒素の分布パーセントと製粉分画の重量パーセントがほぼ一致しており、減毒効果は小さい。中汚染粒では、小麦粒内に毒素が均一に拡散している可能性がある(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- DON試験法(通知法)に準じた方法により、各製粉分画においてDON/NIV 同時分析が可能である。
- DONの製粉前後の動態については外国産小麦では報告があり、DONは製粉後のふすまに濃縮され可食部では減毒されるというデータがほとんどであるが、今回調べた国産めん用小麦1品種では汚染レベルによっては、製粉がDON/NIVの除去に効果的ではない場合が有る。
- 中汚染粒の製粉でのNIVの製粉前後の動態はDONに類似しており、より点数を増やして解析を行い、NIVのリスク管理のための科学的知見を集積する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
加工
小麦
品種
防除
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