オオムギ縞萎縮病抵抗性に関わるrym5座複対立遺伝子の判別DNAマーカー

タイトル オオムギ縞萎縮病抵抗性に関わるrym5座複対立遺伝子の判別DNAマーカー
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター
研究期間 2009~2010
研究担当者 長嶺 敬
柳沢貴司
高橋飛鳥
池田達哉
五月女敏範
沖山毅
発行年度 2010
要約 rym5座の縞萎縮病抵抗性を司るeIF4E遺伝子内の塩基配列変異をもとに開発したfra2Bマーカーは、Ⅰ型ウイルス抵抗性のrym5遺伝子、Ⅰ型とⅢ型に抵抗性のrym5a及びrym5b遺伝子、罹病性のRym5遺伝子を判別できる。
キーワード オオムギ、オオムギ縞萎縮病、抵抗性、rym5、DNAマーカー
背景・ねらい オオムギの縞萎縮病抵抗性育種にはおもに抵抗性遺伝子rym3が用いられているが、ウイルス系統の変化によってrym3保有品種の罹病例も報告されており、今後は抵抗性遺伝子の集積や新たな抵抗性遺伝子の活用が重要である。rym3座とは異なる抵抗性遺伝子座であるrym5座にはⅠ型ウイルス抵抗性を示すrym5遺伝子の他に、Ⅰ型及びⅢ型に抵抗性を示す複対立遺伝子rym5a及びrym5bがあり、育種利用が期待されている(河田・五月女1998)。また近年、rym5による抵抗性は翻訳開始因子eIF4Eの構造変異によることが明らかにされている(Stracke et al. 2007)。そこで、主要品種のeIF4E遺伝子の塩基配列変異を明らかにしてrym5座の複対立遺伝子を判別し、抵抗性育種の効率化に有用なDNAマーカーを開発する。
成果の内容・特徴
  1. rym5座遺伝子型が異なる主要なオオムギ13品種・系統のeIF4E遺伝子のコード領域(CDS)内には合計9カ所の一塩基多型(SNPs)があり、供試品種・系統は7タイプに分類できる。このうち、rym5遺伝子に特異的なSNPは2ヵ所、rym5a及びrym5b遺伝子に共通の特異的なSNPは1ヵ所である(データ略)。
  2. eIF4E遺伝子のSNPsを基に開発したCAPSマーカーfra2Bを用いれば縞萎縮ウイルスⅠ型に抵抗性を示すrym5型、Ⅰ型ウイルス及びⅢ型ウイルスに抵抗性を示すrym5a/rym5b型、罹病性の野生型(Rym5型)を分類できる(表1、表2、図2)。
  3. fra2Bマーカーを用いれば日本の在来品種、育成品種・系統など768品種・系統のうち、6.8%を占める52品種・系統がrym5a/rym5bタイプに分類される(表3)。この中には、「横綱」、「坊主」、「磐田三徳」、「四国裸67号」などの主要在来種や育種的に重要な系譜親が含まれ、縞萎縮病抵抗性遺伝子rym5a/rym5bは古くから経験的にわが国の六条オオムギ育種では利用されてきた遺伝子型であると考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. 本マーカーは縞萎縮病抵抗性品種の開発に用いる。rym3保有系統の中からrym5をもつ系統を選抜すれば、既知のオオムギ縞萎縮Ⅰ型~Ⅴ型ウイルスのすべてに対して抵抗性の系統を選抜できる。
  2. rym5座の複対立遺伝子の一つであるrym4に相当する塩基配列をもつ「備前早生」、「八石」など少数の六条在来品種は縞萎縮病に罹病性である。fra2Bマーカーではrym4保有品種はrym5型と同じ電気泳動パターンを示すため留意する必要がある。
図表1 234760-1.png
図表2 234760-2.png
図表3 234760-3.png
図表4 234760-4.png
カテゴリ 育種 萎縮病 大麦 DNAマーカー 抵抗性 抵抗性遺伝子 抵抗性品種 品種

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