海洋酸性化がエゾアワビ幼生の発育に及ぼす影響

タイトル 海洋酸性化がエゾアワビ幼生の発育に及ぼす影響
担当機関 (独)水産総合研究センター 東北区水産研究所
研究期間 2008~2010
研究担当者 高見秀輝
中央水研
北水研
発行年度 2010
要約 海水中のCO2濃度を高精度で管理しながら、発育初期のエゾアワビを飼育する実験系を確立した。現代のCO2レベル(大気平衡:約450ppm)および500-2000ppmのCO2調整海水を用いて、受精卵から変態可能な被面子幼生に発達するまで飼育した。1500ppm以上のCO2海水では、受精率および孵化率が低下した。幼生を孵化直後から75時間飼育した場合、1000ppm以上で幼殻の形成が不完全な個体の割合が増加した。
背景・ねらい 化石燃料消費によって増加した大気CO2のため、海洋の酸性化が進行している。海洋酸性化は石灰化生物の炭酸カルシウム合成を阻害することが考えられ、海洋の生態系や生物資源に深刻な影響を及ぼすことが懸念されている。本研究では、飼育技術が確立されているエゾアワビを用いて、精度の高い生物試験により、環境変動に脆弱な発育段階初期の石灰化生物に与える酸性化の影響を明らかにし、地球温暖化影響を回避するために超えるべきではない大気CO2濃度レベルの評価に資する。
成果の内容・特徴 国立環境研究所が開発した二酸化炭素添加装置を導入し、設定したCO2濃度を維持しながらエゾアワビ幼生を流水飼育できる実験系を開発した。この実験系により海水中のCO2濃度が大気平衡(約450ppm), 500, 1000, 1500, 2000ppmとなるように調整した海水でエゾアワビを受精卵から変態可能となった被面子幼生に発達するまで飼育した。その結果、受精率と孵化率は海水中のCO2濃度1500ppm以上になると有意に低下した(図1)。孵化から75時間飼育した場合の幼生の死亡率はCO2濃度による有意な差は認められなかったが(図2)、幼殻の形成が不完全なため殻内に軟体部を収縮して完全に引き込むことができない奇形個体(図3)の割合は、1000ppm以上で有意に増加した(図2)。幼生の幼殻を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、1000ppm以上では殻縁辺部に損傷が認められる個体が多かった(図4:B, C, E, F)。また、2000ppmでは殻縁辺部の構造が不規則になっており、薄皮状のめくれあがった殻が形成されていた(図4: C, F) 。
成果の活用面・留意点
  • 海水中のCO2濃度が1000ppm以上になると(CO2の排出削減が進まないと約100年後に到達)エゾアワビの幼殻形成が阻害され、1500ppm以上では受精率、孵化率が低下することが明らかとなった。
  • 実際の沿岸域のCO2濃度は呼吸、光合成等の生物活動や水塊の移動などにより日周変動するため、海洋酸性化が沿岸海洋生物に与える影響をより詳しく評価するためには、このようなCO2濃度の変動を考慮する必要がある。
図表1 234936-1.png
図表2 234936-2.png
図表3 234936-3.png
図表4 234936-4.png
カテゴリ 飼育技術

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる