タイトル |
オオムギ完全長cDNA 24,783配列をデータベースから公開 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2008~2012 |
研究担当者 |
松本隆
田中剛
坂井寛章
金森裕之
栗田加奈子
堀清純
伊藤剛
佐藤和広
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発行年度 |
2011 |
要約 |
全ゲノム情報が解読されていないオオムギから大規模な完全長cDNAライブラリーを構築し、このうち代表的な24,783のcDNAの全長配列を解読した。本配列は各遺伝子の機能情報と共に生物研のウエブサイトから公開した。
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キーワード |
オオムギ、完全長cDNA、データベース
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背景・ねらい |
オオムギは生産量において世界第4 位の穀物であり、食糧として利用されるほか、飼料・ビール製造等に利用されている。現在、オオムギでは耐病性・穂発芽性などを制御して品種改良を目指した研究が行われているが、ゲノム配列が解読されていないことから、オオムギ遺伝子の全体像の把握は進んでいない。本研究では、栽培オオムギから遺伝子の機能的な構造を反映した「完全長cDNA」を大量に取得し、塩基配列を解読することによって、オオムギの全遺伝子を網羅的に把握し、それぞれの遺伝子の機能の解明や農業上有用な生物現象の理解を目指すものである。
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成果の内容・特徴 |
- オオムギ品種「はるな二条」を低温、乾燥、ホルモン処理等様々なストレス条件下で栽培し、RNAを抽出した後cDNA合成を行い、遺伝子の完全なコピーである「完全長cDNAクローン」を17万2千個収集した。その中から重複を除いた代表の24,783個を選抜し、その塩基配列を決定した(図1)。このうち85%は翻訳されて完全なタンパクを生成すると推定された。また既知の遺伝子データベース(RefSeqとUniProtKB)と照合することにより、今回決定された遺伝子配列の85%について機能を予測することができた。
- 得られたオオムギの遺伝子情報と、既に公開されているイネ、トウモロコシ、ソルガム及び野生のイネ科植物であるミナトカモジグサの遺伝子情報とを比較したところ、87%の遺伝子が4つの作物種で共通であり、イネ科の遺伝子の配列保存性が高いことを示した。一方、他のイネ科作物と配列の相同性がない遺伝子が1,699個見つかり、これらの遺伝子がオオムギの特徴を決定していると考えられた。
- 今回解読した完全長cDNA配列を公的データベースであるDDBJに登録すると同時に、配列の機能を推定したアノテーションや遺伝子発現データを付加した生物研のデータベースBarley full length cDNA database (http://barleyflc.dna.affrc.go.jp/hvdb/index.html)として2011年3月17日に公開した。
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成果の活用面・留意点 |
- 今回の研究成果は、オオムギにおいて実際に発現し、機能している遺伝子の構造を網羅的に明らかにしたものである。この知見を他の作物のゲノム配列や遺伝子配列と比較する事によって、ムギ類の遺伝子の機能の迅速な解明や、形質に関わる遺伝子の選抜マーカーとしての利用が可能となり、ムギ類の品種改良への活用が期待される。
- 完全長cDNAは遺伝子の全長を含むと期待されるため、cDNAクローンを植物に導入して形質転換作物を作成し、各遺伝子の機能解明が進むと期待される。
- 現在コムギやオオムギのゲノム配列決定にむけて国際共同研究が進められているが、本研究で作成したオオムギの完全長cDNAの配列は、コムギやオオムギのゲノム配列の遺伝子アノテーションにおける有用な情報として利用できる。
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図表1 |
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研究内容 |
http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h23/nias02302.htm
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カテゴリ |
大麦
乾燥
ソルガム
データベース
とうもろこし
品種
品種改良
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