タイトル |
抗体活性を有する新しいシルク素材の創出 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2009~2011 |
研究担当者 |
佐藤 充
小島 桂
佐久間智理
村上麻理亜
荒谷恵梨子
竹之内敬人
玉田 靖
木谷 裕
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発行年度 |
2012 |
要約 |
遺伝子組換えカイコ技術を利用して、一本鎖抗体と絹タンパク質の融合タンパク質を生産した。シルクタンパク質の加工技術と組み合わせることにより、抗体活性を有する新しいシルク素材「アフィニティーシルク」を創出した。
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キーワード |
遺伝子組換えカイコ、一本鎖抗体、有用タンパク質生産、機能性シルク素材
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背景・ねらい |
抗体は極めて強い特異的結合活性をもつことから、タンパク質機能解析や疾病診断・創薬など、幅広い分野での産業利用が期待されている。その一方、抗体の製造コストの高さが課題となっており、低コスト化に向けて全く新しい観点からの技術革新が必要となっている。本研究はカイコが多量に生産する絹タンパク質に着目し、絹タンパク質に直接抗体分子を融合させた新素材「アフィニティーシルク」を生産することに成功した。本技術により、抗体活性を有する新素材を安く大量に生産することが可能となる。
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成果の内容・特徴 |
- カイコが吐く絹(シルク)はタンパク質で出来ており、カイコはタンパク質生産系として優れた特長を持つ。遺伝子組換え技術を用いて、一本鎖抗体(抗体の可変領域だけを抜き出し再構成した分子)と絹フィブロインタンパク質を融合させた「アフィニティーシルク」タンパク質を生産する遺伝子組換えカイコを作出した(図1)。
- 作出したカイコの繭層から、抗原結合活性を保持したまま、アフィニティーシルク・パウダーを調製する方法を確立した。
- 本技術の最初の試みとして、ヒトやマウスの免疫細胞のシグナル伝達分子として知られるWASPというタンパク質に対する抗体活性をもつアフィニティーシルクタンパク質を作製した。アフィニティーシルク・パウダーを作製し免疫沈降を行ったところ、WASPタンパク質を細胞抽出液から特異的に精製することができ、アフィニティーシルク・パウダーが標的タンパク質に特異的な抗体活性を持つことが確認された(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 遺伝子組換えカイコ技術を利用して、一本鎖抗体と絹タンパク質を融合させた「アフィニティーシルク」を開発した。この技術を利用することにより、抗体活性を持つ新素材を大量・安価に製造することが可能となる。
- アフィニティーシルクとシルクタンパク質の加工技術と組み合わせることにより、抗体活性を付加したアフィニティーシルク・パウダーの創製に成功した。このアフィニティーシルク・パウダーは目的タンパク質を精製するための担体として利用できると期待される。今後、さらにアフィニティーシルク・ゲルやフィルムなどの開発を進め、ウイルス・細菌感染および様々な疾病を簡便に検査できる診断薬キット等への応用を目指す。
- 一本鎖抗体以外にも様々な機能性タンパク質との融合シルクタンパク質を生産し、既存の製品にはない新素材を創出できる可能性もある。よって本研究で開発された技術的シーズは、将来、組換えカイコによる有用物質生産の振興と発展に大きく貢献すると期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h24/nias02414.html
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カテゴリ |
カイコ
加工
機能性
コスト
低コスト
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