マツモトコナカイガラムシのフェロモンの化学構造を解明

タイトル マツモトコナカイガラムシのフェロモンの化学構造を解明
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間
研究担当者 田端 純
平舘 俊太郎
杉江 元
奈良井 祐隆
澤村 信生
発行年度 2012
要約 マツモトコナカイガラムシのフェロモンは、他のコナカイガラムシ類のフェロモン(モノテルペン)とは全く異なるヘミテルペン系化合物であることを明らかにしました。この物質は簡単に合成できるため、本種の防除にすぐに活用できるものと見込まれます。
背景・ねらい マツモトコナカイガラムシはブドウ等の果樹を加害します。根際等の目立たないところで繁殖し、殺虫剤による防除が難しい害虫として知られています。本種のメス成虫が放出するフェロモン物質はオス成虫を強力に誘引します。この物質を利用すれば、この害虫の発生を効率的にモニタリングしたり、配偶行動を撹乱したりすることができます。このような殺虫剤を減らした環境に優しい害虫防除技術開発に役立てることを目的として、本研究ではこのフェロモン物質の化学構造解析を行いました。
成果の内容・特徴 マツモトコナカイガラムシCrisicoccus matsumotoi(Siraiwa)(図1)のメス成虫を大量に飼育し、約10万頭のメスが一日当たりに放出する量の匂いを吸着剤によって捕集しました。この中から、オス成虫に対し誘引活性を示す物質を、液体クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーによって単離しました。この物質を質量分析計や核磁気共鳴装置で分析し、その構造をイソプレニル5-メチルヘキサノエート(iP5MH)と決定しました。この物質はヘミテルペン系の化合物であり、これまでに知られているコナカイガラムシ類のフェロモン(モノテルペン系エステル)とは全く異なる構造でした(図2)。iP5MHを天然物として単離・発見した研究はこれがはじめてです。
本種による被害が見られる島根県農業技術センター内のブドウ園において、iP5MHの誘引活性を調査しました。調査は同センターが担当し、0.1mgのiP5MHを誘引源としたトラップを設置したところ、大量のオス成虫が捕獲されました(図3)。
iP5MHはイソプレノールと5-メチルヘキサン酸のエステルです。いずれも市販されている比較的単純な化合物であるため、iP5MHは簡単に合成できます。したがって、他のコナカイガラムシ類のフェロモンよりも低コストで大量に供給することができます。この物質をトラップとして活用すれば、本種の発生状況を効率的に調査できるようになり、幼虫の発生時期や量を高い精度で予測すること(発生予察)が可能となります。さらに、オスによるメスの探索を邪魔して交尾・繁殖を妨げることもできると考えられます。
図表1 235871-1.png
図表2 235871-2.png
図表3 235871-3.png
研究内容 http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result29/result29_40.html
カテゴリ 病害虫 害虫 低コスト 繁殖性改善 フェロモン ぶどう 防除 モニタリング

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