タイトル |
病斑数ならびに病斑径によるブドウ黒とう病抵抗性評価法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
2009~2011 |
研究担当者 |
河野 淳
佐藤明彦
中野正明
山田昌彦
三谷宣仁
伴 雄介
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発行年度 |
2012 |
要約 |
ブドウ黒とう病菌を切葉に接種後、形成された病斑数と病斑径を測定することによって、定量的に黒とう病抵抗性の品種間差異を評価できる。
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キーワード |
ブドウ、黒とう病抵抗性、病斑径、病斑数
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背景・ねらい |
ブドウ黒とう病は生育期に降雨の多い地域において問題となる雨媒伝染性の主要病害であり、一般に欧州ブドウは抵抗性が弱く、欧米雑種ブドウは比較的強いとされる。本病に対する抵抗性品種を効率よく育成するためには、ブドウ品種・系統の黒とう病抵抗性を安定的に評価できる手法を開発する必要がある。そこで、挿し木苗から採取した切葉を用い、黒とう病菌の接種後に生じた病斑数と病斑径を併せた評価法が有効であるか検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 温室内で生育させたブドウ挿し木苗から展開途中の葉を採取し、0.5%の寒天培地に葉柄を挿し、分生子懸濁液(5×103/mlおよび1×103/ml)25μLをそれぞれ約1cm2のガーゼ上に滴下接種し、27℃湿度95%以上の恒光条件下で培養する。病斑が明らかになる接種5~7日後に、5×103/ml区で病斑数を測定する。さらに、接種14日後にいずれかあるいは両方の接種区を用い、病斑径の明確なものについて病斑径を測定する。推定病斑面積は、平均病斑数×π×(平均病斑径/2)2として求める。
- 病斑数、病斑径ともに品種間分散が大きく、病斑数においては誤差分散が最も大きい。一方、年次間分散や品種×年次交互作用はきわめて小さい(表1)。3年間各9葉を用いて測定した場合の広義の遺伝率の推定値は、病斑数については0.90、病斑径は0.96と高い。
- 欧州ブドウは病斑数が多い(表2)。欧州ブドウ3品種(「イタリア」、「マスカットオブアレキサンドリア」、「トムソンシードレス」)の病斑径は大きいが(表2、図1左)、「エキゾチック」と「パーレット」の病斑径は中程度である。このことから、一部の欧州ブドウは、病斑拡大を阻害する抵抗性をもつことが示唆される(表2)。
- 欧米雑種ブドウには、病斑数に有意な品種間差があり(表2)、病斑数を抑えるような抵抗性が存在するとともに、病斑径にも大きな品種間差がある(表2、図1右)。このことから、欧米雑種ブドウは、病原菌の進入自体を阻害する抵抗性と病斑拡大を阻害する抵抗性を併せ持つと考えられる。結果として、推定病斑面積は欧州ブドウに比べ著しく小さいものが多い。
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成果の活用面・留意点 |
- 病徴全体について目視により定性的な達観調査をするのではなく、病斑数と病斑径の2要因に分けて定量的に評価することにより、欧州ブドウに見られるような病斑の拡大のみを抑える抵抗性も定量的に評価できる。
- 黒とう病菌分生子懸液の作成や病徴が明らかになるまで、接種後の切葉を培養するための恒温振盪培養器や人工照明付属の培養設備などが必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2012/142b0_02_07.html
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カテゴリ |
挿し木
抵抗性
抵抗性品種
光条件
評価法
品種
ぶどう
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