タイトル |
地球温暖化緩和策となる有機質暗渠疎水材による炭素貯留技術の評価 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2011~2012 |
研究担当者 |
北川巌
原口暢朗
若杉晃介
瑞慶村知佳
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発行年度 |
2012 |
要約 |
有機質暗渠疎水材による炭素貯留量は、15年後の疎水材の炭素残存量から暗渠施工時と暗渠施工圃場からの温室効果ガス排出量を差し引き算定する。疎水材による炭素貯留量は、北海道で木材チップの場合に0.45tCO2/ha/yとなり炭素貯留技術として成立する。
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キーワード |
有機質暗渠疎水材、農地下層、炭素貯留、木材チップ、モミガラ
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背景・ねらい |
農業分野における地球温暖化緩和策となる農地土壌への炭素貯留の強化策には、我が国独自の暗渠などの農地整備を活用する農地下層での炭素貯留技術を検討している。本技術の効果検証にあたっては、有機質資材の炭素残存量や各段階の温室効果ガス発生の影響を踏まえた温室効果ガス削減ポテンシャルを明らかにする必要がある。そこで、有機質暗渠疎水材を用いた農地下層における炭素貯留技術について、疎水材の炭素残存量の経年変化、暗渠施工時や暗渠施工圃場からの温室効果ガス排出を考慮して炭素貯留量を評価する。
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成果の内容・特徴 |
- 北海道における水田の木材チップ暗渠とモミガラ暗渠の経年変化の調査から、各疎水材の炭素残存量を示す(図1)。この結果に基づき暗渠疎水材の耐用の目安である15年後の有機質暗渠疎水材の炭素残存率を回帰式から推定すると、木材チップは49.5%、モミガラは5.4%で大差がある。このことから、炭素貯留技術には資材の選択が重要である。
- 有機質疎水材暗渠の施工時に発生する温室効果ガス排出量は、工事費と燃料消費量に温室効果ガス排出原単位を掛けて算定すると、木材チップ暗渠が4.65tCO2/ha、モミガラ暗渠が4.36tCO2/haとなり差はない(表1)。
- 木材チップを用いた有機質疎水材暗渠のCH4フラックスは、暗渠未施工圃場より小さく、かつ疎水材暗渠直上の地点で暗渠から離れた地点より小さく、埋設した有機質資材がCH4フラックスを増加させない(図2)。また、有機質疎水材暗渠圃場のN2Oフラックスは極めて小さく考慮する必要がない。これらのことから、水田暗渠において有機質疎水材はCH4とN2Oの温室効果ガス排出量を増加させない。
- これらの結果から、有機質暗渠疎水材による炭素貯留量は、炭素貯留期間を15年として算定すると、木材チップ暗渠で6.76tCO2/ha/15y、1年あたり0.45tCO2/ha/yとなる(表2)。この値は、現在、農業における農地管理による温暖化緩和策に取り組んでいる国の二酸化炭素吸収活動量と同レベルであり、炭素貯留技術として十分に見込める。なお、モミガラは分解が早いため炭素貯留の効果を発揮しない。
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成果の活用面・留意点 |
- 本評価は、我が国で最も炭素貯留量が多いと考えられる積雪寒冷地の北海道地方の水田において測定した結果であり、日本における本技術の最大値と評価できる。
- 有機質暗渠疎水材の炭素貯留量は、疎水材の使用量と算定したい地域における疎水材の任意の経過年数における炭素分解率、暗渠整備費用の内訳の情報があれば、この手法により算定することができる。
- 1~2年程度の有機質暗渠疎水材の炭素残存量のデータがある場合には、平成21年度成果情報「土層改良で農地下層土に埋設するバーク堆肥の炭素量の長期変動と評価法」の方法を用いて15年後の炭素残存量を求めることができる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2012/210e0_02_16.html
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カテゴリ |
土づくり
肥料
水田
評価法
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