タイトル |
早生多収の飼料用米に適する水稲新品種候補系統「奥羽409号」 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 |
2004~2012 |
研究担当者 |
福嶌 陽
太田久稔
梶 亮太
津田直人
山口誠之
中込弘二
片岡知守
遠藤貴司
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発行年度 |
2012 |
要約 |
「奥羽409号」は、東北地域中部では出穂期が"早生の晩"に属する粳種である。普及予定地において、多収品種「ふくひびき」より粗玄米重が多い。耐倒伏性は"やや強"である。大粒で品質が劣るため、食用品種と識別可能である。
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キーワード |
イネ、飼料用米、多収、早生の晩、耐倒伏性
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背景・ねらい |
飼料用イネの需要拡大に伴い、東北各地域の栽培条件に応じた飼料用イネ品種が求められている。岩手県一関市大東地区は,岩手県南部に位置する冷涼な中山間地域であり、飼料用米の水稲が約100ha作付されている。飼料用米品種の移植は、食用品種の移植後の5月25日以降とやや遅いため、出穂期が遅く障害型冷害は回避できる。一方、やや遅植えでも収量が安定して高い早生の品種が求められる。このような地域条件に応じた飼料用米品種を育成する。
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成果の内容・特徴 |
- 「奥羽409号」は、粗玄米収量が高い飼料用米品種の育成を目標に、早生の晩で大粒・多収の「奥羽飼394号」を母とし、早生の早で多収の「奥羽飼395号(べこごのみ)」を父として交配した組合せから育成された粳系統である。
- 育成地における出穂期は「ふくひびき」より4日早く、「あきたこまち」より2日早い"早生の晩"、成熟期は「ふくひびき」より1日遅く、「あきたこまち」より3日遅い"中生の中"に属する(表1)。
- 稈長は「ふくひびき」より長く、「あきたこまち」並である。穂長は「ふくひびき」よりやや長く、「あきたこまち」より明らかに長い。穂数は「ふくひびき」よりやや少なく、「あきたこまち」より明らかに少ない。草型は"極穂重型"である(表1)。
- 育成地の多肥栽培においては、粗玄米重は85.5kg/aと「ふくひびき」と同程度で「あきたこまち」より明らかに多収である。しかし、稈長は95cmと「ふくひびき」より約10cm高く、倒伏の危険性がある。普及予定地においては、粗玄米重は68.9kg/aと「ふくひびき」より15%多収で、稈長は82cmと倒伏の可能性は低い(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は"Pik、Pib"と推定され、育成地でのいもち病の発生は認められない。障害型耐冷性は"弱"である(表1)。
- 玄米千粒重は、「ふくひびき」よりやや重く、「あきたこまち」より明らかに重い。外観品質は「ふくひびき」に劣り、「あきたこまち」より明らかに劣る。このため食用品種と識別可能である(表1)。
- 普及予定地において、多施肥および穂揃い期追肥により玄米のタンパク質含有率を高めることができる(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 栽培適地は東北中南部以南である。岩手県一関市において30haの普及が見込まれる。
- 出芽不良となることがあるので、温湯消毒および10℃以下の低温浸種は避ける。
- 極多肥条件では倒伏することがあるので、窒素施肥量は食用品種の慣行施肥量の1.5倍までとする。
- 障害型耐冷性が弱いので、冷害の常襲地帯での栽培は避ける。
- いもち病真性抵抗性遺伝子Pik、Pibを保有すると推定されるために、通常、いもち病の発生は認められないが、病原菌レースの変化により発生が認められた場合は適宜、薬剤防除を行う。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2012/120a0_01_01.html
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カテゴリ |
病害虫
いもち病
温湯消毒
栽培条件
出芽不良
需要拡大
飼料用米
飼料用作物
新品種
水稲
施肥
中山間地域
抵抗性遺伝子
凍害
品種
防除
薬剤
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