硫酸塩による湛水直播水稲の苗立ち阻害とモリブデン酸塩による軽減効果

タイトル 硫酸塩による湛水直播水稲の苗立ち阻害とモリブデン酸塩による軽減効果
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
研究期間 2009~2012
研究担当者 原 嘉隆
発行年度 2012
要約 20℃程度でも硫酸塩の添加で水稲の苗立ちは阻害される。これは、種子近傍が著しく還元になり硫酸イオンから有害な硫化物イオンが生成するためである。モリブデン酸塩の添加で苗立ち阻害が軽減される。これは、硫化物イオンの生成が抑制されるためである。
キーワード 水稲、湛水直播、苗立ち、モリブデン、硫化物イオン
背景・ねらい 水稲作において、直播は省力で安価な手段と期待されるが、湛水直播では酸素発生剤の被覆など、苗立ち確保のために労力と費用がかかり、普及があまり進んでいない。そこで、簡易な方法を開発するため、無被覆籾の苗立ちの阻害要因を明らかにする必要がある。

30℃程度の高温が続くと水田土壌中では有害な硫化物イオンが生成し、根が腐れて茎葉が枯れる秋落ちは広く知られている。同様に高温では苗立ちも硫酸塩から生成する硫化物イオンによって阻害されることが報告されている。しかし、実際は春のより低温で行われる直播において硫化物イオンが生成するかは明らかになっていない。そこで、苗立ちが阻害される一要因として硫化物イオンに着目し、低温における硫化物イオン生成の状況証拠を得る。その一手段として、硫化物イオンの生成を抑制することが報告されているモリブデン資材による苗立ち向上効果も調べた。
成果の内容・特徴
  1. 20℃において、土壌への1mmol/kg(約3kgN/10a)を超える硫安添加によって、土中播種された水稲の苗立ちは著しく阻害される(図1)。土壌滅菌時は阻害されない。このことから、硫安添加による苗立ち阻害は微生物の作用と示唆される。
  2. 20℃において、湛水土壌の酸化還元電位は、種子が無い場合、低下が緩慢であるが、種子近傍では、微生物によって硫化物イオンが生成されうる-0.2V程度までわずか3日ほどで低下する(図2)。この酸化還元電位の低下に合わせて、種子近傍に硫化鉄を示唆する黒色円が生じる。また、土壌への硫安の添加は酸化還元電位に影響を与えない。
  3. 硫化物イオンの生成を抑制するモリブデン酸カリウムを土壌に1.5-15mmol/kg程度添加すると、硫安添加時の苗立ち阻害が軽減される(図3)。また、モリブデン酸カリウムの添加によって、種子近傍に硫化鉄を示唆する黒色円も生じなくなる。
  4. 硫酸イオンが主体である土壌溶液の硫黄は、種子が無いと減少しないが、種子近傍では20℃程度の低温でも播種後6日ぐらいから減少する(図4)。これは、可溶性の硫酸イオンから硫化物イオンが生じ、鉄イオンと結合して不溶性となることを示唆している。また、モリブデン酸塩を添加すると可溶性硫黄の減少が抑制される(図4)。これは、モリブデン酸塩が硫化物イオンの生成を抑制することを示唆している。
成果の活用面・留意点
  1. 湛水直播において、硫酸根を含む肥料(硫安や硫加など)や家畜糞堆肥を施用すると苗立ちが阻害されやすいことが示唆される。
図表1 236253-1.png
図表2 236253-2.png
図表3 236253-3.png
図表4 236253-4.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2012/s111b5_01_05.html
カテゴリ 肥料 水田 水稲 播種

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