タイトル |
昆虫遺伝子の機能解析に有効なコクヌストモドキ培養細胞株の樹立 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2009~2012 |
研究担当者 |
粥川琢巳
立石剣
篠田徹郎
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発行年度 |
2013 |
要約 |
甲虫目のモデル昆虫「コクヌストモドキ」の胚由来の培養細胞株Tc81を樹立し、それを用いて幼若ホルモン(JH)シグナル経路の解析を行った。本細胞は高いRNA干渉効果を示し、また外来遺伝子の導入が容易であるため、JHシグナル経路だけでなく、様々な昆虫遺伝子に対する汎用的機能解析ツールとしての利用が見込まれる。
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キーワード |
コクヌストモドキ、培養細胞株、RNAi、遺伝子導入、幼若ホルモン
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背景・ねらい |
貯穀害虫である甲虫「コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)」は、飼育が容易で、ライフサイクルが短いことや、ゲノム情報が解読されていること、また個体へのdsRNA注射によるRNAiの効果が非常に高いことから、ショウジョウバエに次ぐモデル昆虫として多くの研究室で使用されている。しかしながら、遺伝子機能解析に有効なコクヌストモドキ培養細胞株は、これまで報告されていない。そこで本研究では、コクヌストモドキ胚由来の細胞株Tc81を樹立し、RNAiや遺伝子導入の効果を調査すると共に、JHシグナル経路の解析を行い、本培養細胞株の有効性を検証した。
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成果の内容・特徴 |
- コクヌストモドキ胚由来の培養細胞株Tc81を樹立することに成功した。Tc81細胞は、多数の細胞が集まって不定形の袋状の細胞群(小胞)を形成し、浮遊性を示した(図1)。
- Tc81細胞は、培地中に低濃度のdsRNAを添加するだけで高いRNAi効果を示し、その効果は1週間以上持続した(図2)。
- Tc81細胞は高いJH応答性を持ち、JH誘導性の変態抑制遺伝子Krüppel homolog 1(Kr-h1)が極低濃度のJHにより短時間で誘導された(図3)。
- Tc81細胞は、遺伝子導入とレポーターアッセイを容易に行うことができる。例えば、Kr-h1のJH応答配列(JHRE)の下流にホタルルシフェラーゼ(レポーター遺伝子)を連結したプラスミド(JHRE-レポーター)を、トランスフェクション試薬を用いてTc81細胞に導入することで、JH依存的なレポーター活性が得られた(図4)
- Tc81細胞でJH受容体Methoprene tolerant遺伝子(Met)、およびそのパートナーであるSteroid receptor coactivator(SRC)遺伝子のRNAiを行うと、いずれの場合もJHによるJHRE-レポーターの活性が減少した(図4)。この結果から、以前報告したカイコと同様、コクヌストモドキにおいてもMetとSRCの両者がJH依存的にJHREに作用することで、Kr-h1遺伝子の発現が誘導されていることが確認された。甲虫目のコクヌストモドキと鱗翅目のカイコで共通のJHシグナル経路が保存されていることが明らかになった。
- Tc81細胞は樹立後3年以上(150代以上)継代しているが、外部形態、RNAi効果、トランスフェクション効率およびJHに対する応答性に顕著な変化は認められず、細胞株の諸性状は非常に安定している。
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成果の活用面・留意点 |
- 本細胞株はRNAiおよび遺伝子導入が容易に行えるため、JHシグナル経路だけでなく、様々な生命現象に関わる昆虫遺伝子の機能解明において汎用的かつ強力なツールとなると期待される。
- 本細胞株は、甲虫目害虫に対する新規制御剤スクリーニング系の開発にも利用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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研究内容 |
http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h25/nias02511.html
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カテゴリ |
カイコ
害虫
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