角膜構造を再現した培養モデルを用いた新しい安全性試験法の開発

タイトル 角膜構造を再現した培養モデルを用いた新しい安全性試験法の開発
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2011~2013
研究担当者 竹澤俊明
山口宏之
小島肇
発行年度 2013
要約 新素材「コラーゲンビトリゲル®膜」を使って、ヒト角膜上皮の構造を再現した培養モデルを構築した。この培養モデルを用いて、眼に対する化学物質の高感度な安全性試験法を開発した。本試験法は、動物を用いず安全性を判断でき、かつ刺激性のより少ない安全な化粧品などの開発に役立つ。
キーワード コラーゲン、ビトリゲル®、角膜、眼刺激性試験、培養モデル、三次元培養
背景・ねらい 化粧品や医薬品等の原料となる化学物質の、ヒトに対する安全性評価は、主に動物実験により行われている。しかし、動物実験の結果は必ずしもヒトでの安全性を反映しないという問題があった。また既に欧州では、化粧品原料に対する動物を用いた安全性試験は、動物愛護の観点から全面的に禁止されている。このような背景から、世界的に動物を使用しない試験法の開発が進められているが、動物実験を完全に代替できるような優れた眼刺激性試験法は確立されていない。本研究では、コラーゲンビトリゲル膜を貼ったチャンバー内でヒトの角膜上皮細胞を三次元的に培養して角膜上皮の培養モデルを構築し、本培養モデルを用いて、ウサギの眼を用いた眼刺激性試験を代替する試験法の開発を目指した。
成果の内容・特徴
  1. コラーゲンビトリゲル膜は、従来型のコラーゲンゲルと比べて、約100倍高密度のコラーゲン線維で構成される。このコラーゲンビトリゲル膜をプラスチックの枠に張ったチャンバーを開発し、民間企業への技術移転により、新しい細胞培養容器「コラーゲンビトリゲル膜チャンバー」の製品化に成功した(図1)。コラーゲンビトリゲル膜チャンバーは細胞の三次元培養に有用で、様々な組織や器官の培養モデルを容易に構築できる。
  2. コラーゲンビトリゲル膜チャンバー内にヒトの角膜上皮由来の細胞を三次元培養することにより、ヒト角膜上皮と組織学的に類似したヒト角膜上皮の培養モデルを構築することに成功した(図2)。
  3. このヒト角膜上皮の培養モデルを用いて、化学物質の眼刺激性の有無を評価する新しい眼刺激性試験法「Vitrigel-EIT(Eye Irritancy Test)法」を開発した。Vitrigel-EIT法は、培養モデルに被験物質を曝露して3分以内に変動する経上皮電気抵抗(TEER)値のパターンを解析し、このパターンを評価する3つの指標から眼刺激性の有無を判定できる迅速で簡便な試験法である(図3)。
  4. Vitrigel-EIT法を用いて、30種類の化学物質について眼刺激性の有無を解析した。従来法の動物実験に基づく「GHS分類」の結果との比較から、Vitrigel-EIT法が、感度100%、特異度75%、および一致度90%と高い感度を持つことが確認された。またVitrigel-EIT法で偽陽性を示した被験物質は、免疫組織学的な解析により弱い眼刺激性を有していることが実証された。 
成果の活用面・留意点
  1. Vitrigel-EIT法の利用により、刺激のより少ない、安全な化粧品やシャンプーなどが開発できると期待される。
  2. 今後、Vitrigel-EIT法の正確性と再現性を証明する研究を行い、国際的な公定法「OECDテストガイドライン」への登録を目指すことで、世界中のメーカーが製品の安全性試験として利用できるシステムの構築が可能となる。
  3. 動物実験を代替する試験法は主に化粧品の開発に使用されてきたが、将来的には医薬品や食品の開発にも普及すると予想される。今後、コラーゲンビトリゲル膜チャンバーを利用した消化器官や血管などの培養モデルとその試験法の開発を進める予定である。
図表1 236370-1.jpg
図表2 236370-2.jpg
図表3 236370-3.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h25/nias02514.html
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