草地更新による除染では耕深が深く、砕土率が高い耕うん法の効果が高い

タイトル 草地更新による除染では耕深が深く、砕土率が高い耕うん法の効果が高い
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2011~2013
研究担当者 渋谷岳
天羽弘一
伊吹俊彦
平野清
山田大吾
阿部佳之
小島陽一郎
発行年度 2013
要約 草地更新による牧草の放射性セシウム(Cs)濃度の低減程度は、耕うん法の違いによって異なり、耕深13cmまででは耕深が深いほど、砕土率が高いほど放射性Cs濃度は低減される。ロータリではつめ軸回転数が高く、作業速度が低い耕うん法での除染効果が高い。
キーワード 草地更新、牧草、耕うん方法、放射性Cs、耕深、砕土率
背景・ねらい 放射性セシウム(以下、放射性Cs)の降下した牧草地において草地更新を行うと新播牧草中の放射性Cs濃度が低減することが判明し、東北・北関東の38,000haの草地で除染対策として草地更新が実施されている。この方法は、放射性Csが沈着した牧草地表層のリター・ルートマット・土壌を埋没させることや砕土・撹拌によって放射性Csの土への吸着を促進することで、牧草への移行を抑制することを狙っている。一方、現地調査によれば耕うんが不十分であると更新による低減効果が劣ることが指摘されている(福島農林水産部農業技術情報第9号「牧草地の除染、吸収抑制対策の徹底について」)が、具体的なデータは揃っていない。そこで、草地更新に適した数種類の耕うん方法による草地更新を実施して牧草への放射性Cs移行に及ぼす影響を調べ、低減効果が高い耕うん法を示す。
成果の内容・特徴
  1. 除染のための草地更新における耕うんに使用できる作業機および方法を組み合わせ7種の耕うん方法を通常の作業速度や回転数を適用して草地更新を行った(2012年9月)。耕うん法別の耕深は2.4~13.8cm、砕土率は60~96%の範囲にあった(表1)。
  2. 草地更新後の牧草の放射性Cs濃度は、2013年の1番、2番、3番と時期が遅くなるほど上昇するが、未更新ほ場に対する比は、1番草で26~64%、2番草で26~67%、3番草で31~66%と番草間で大きくは変わらず、低減傾向が維持される。1番草では、ディスクハローおよびロータリ(高、中、低、浅・中速)区で未更新区に対して放射性Cs濃度が有意に低下し、低減効果が認められる (図1)。
  3. 牧草放射性Cs濃度(Bq/kg水分80%換算)を目的変数、耕深(cm)および砕土率(%)を説明変数とする重回帰分析では1番草、2番草、3番草ともに偏回帰係数および決定係数が有意であり(表2)、耕深が13cmまででは耕深が深いほど、砕土率が高いほど牧草の放射性Cs濃度を低減できる。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:放射性Cs汚染により牧草放射性Cs濃度低減措置を必要とする草地
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:岩手、宮城、福島、栃木、群馬各県の除染対象草地38,000haの内の草地更新が未実施である草地(約3割)
  3. その他:本調査は褐色低地土、土性CL(埴壌土)、草地更新前の土壌表面の空間線量率が0.95μSv/h、放射性Cs濃度2215Bq/kg乾土の平坦な草地で行った。新播草種はオーチャードグラスであるが、1番草、2番草では前年までの埋土種子由来のイタリアンライグラスも多かった。
    プラウ耕とディスクハロー簡易耕うんによる放射性Cs低減効果が、2012普及成果情報「草地更新による採草地表面の放射線空間線量率と新播牧草中セシウム濃度の低減」に示されている。
図表1 236537-1.jpg
図表2 236537-2.jpg
図表3 236537-3.jpg
図表4 236537-4.jpg
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図表6 236537-6.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2013/13_078.html
カテゴリ イタリアンライグラス

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