タイトル |
地下水位制御システム導入地区における水田用水量 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2011~2013 |
研究担当者 |
若杉晃介
原口暢朗
瑞慶村知佳
北川 巌
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発行年度 |
2013 |
要約 |
地下水位制御システムを導入した一筆水田の水稲栽培時用水量は100~400mm程度の節水となり、水田群の用水量も同様の傾向になる。また、大豆栽培時は118~222mmの地下灌漑用水量が新たに発生するが、同一地区の水稲栽培時の用水量の1/3程度である。
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キーワード |
地下水位制御システム、水田用水量、地下灌漑、水位管理
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背景・ねらい |
地下水位制御システムは、地下からの灌漑と排水、及び一定水位管理の機能を有し、水田における麦・大豆など転作作物及び飼料米等の生産力の強化を実現する新たな水管理施設であり、全国的に普及が進んでいる。今後も、公共事業による本システムの地区単位での導入が予想されるが、その機能が地区の用水量に与える影響は検討されていない。そこで、水稲作時及び転作大豆作時における用水量を複数年にわたって調査し、本システムを活用した水管理による水田用水量の特徴を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 河岸段丘に位置し、灰色台地土壌の鹿児島県姶良市蒲生地区において、地下水位制御システムを施工したほ場(FOEASほ場)と近接する未施工ほ場(対照ほ場)を調査地とし、各調査ほ場を含むほ区レベルの水田群においても同様に用水量等を測定する。調査ほ場の下層の透水係数は1.3×10-5cm/s以下である(表1)。水管理はFOEASほ場では水位管理器と水位制御器を用いた一定水位管理、対照ほ場では慣行的な水管理を行った。
- 代かき水稲作時の総用水量はFOEASほ場では408~587mmで年次変動は小さく、多くは地下灌漑によって給水されるが、対照ほ場では162~925mmと変動が大きくなる(表1)。また、FOEASほ場は5年間のうち4ヶ年で、対照ほ場に比較して100~400mm程度節水され、節水率では約2~4割である。両圃場の収量に大きな差は見られない(表2)。
- 日平均用水量はFOEASほ場では5.5~8.2mm/day、対照ほ場では5.8~14.8 mm/dayとなり、FOEASほ場では日々の用水量の減少と平準化が可能になる(表1)。また、FOEASほ場は自動で水位制御を行うため水管理労力も削減される。
- 水田群での用水量の変動傾向は図1の通りである。FOEAS水田群における総用水量は755mm、日平均用水量8mm/day、同様に対照水田群では1024mm、11mm/dayである。FOEAS水田群においても一筆水田と同様に総用水量と日平均用水量が減少する。
- FOEASほ場における大豆作時の地下灌漑用水量は118~222mmであり、同一地区の一般的な水稲栽培用水量の1/3程度となる(表3)。また、日平均用水量は2.6~4.8mm/day、日灌漑用水量は最大で17.3mm/dayで、収量は対照圃場の1.4~4.2倍の安定多収効果がある。一方で対照ほ場では、畝間灌漑等は行われず、無灌漑である。
- 地下水位制御システムの導入により灌漑方法や転作の導入による栽培作物の変化が生じても、導入前の用水量を確保することで地区の用水不足は生じない。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:ほ場整備事業を行う国や県、市町村などの事業計画者
- 普及予定面積:現在、地下水位制御システムFOEASの導入計画地区面積は約5,800haで、今後も増加する予定である。
- その他:透水性が高い土壌は節水効果が発揮されにくい。また、転作大豆等における地下灌漑では、既存の灌漑期間を超える場合は別途水源を確保する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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図表8 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2013/13_002.html
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カテゴリ |
FOEAS
水田
水稲
大豆
水管理
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