水田の耕作放棄が流域の短期流出特性に及ぼす変化の評価法

タイトル 水田の耕作放棄が流域の短期流出特性に及ぼす変化の評価法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2008~2013
研究担当者 吉田武郎
増本隆夫
堀川直紀
皆川裕樹
工藤亮治
発行年度 2013
要約 中山間水田の耕作放棄の進行が流域スケールの短期流出特性に及ぼす変化を、分布型の流出モデルで評価する手法である。この流出モデルに耕作放棄に伴う水田の物理特性の変化を反映させることで、中山間水田が含まれる流域の排水リスク評価に利用できる。
キーワード 中山間水田、耕作放棄、短期流出特性、流域水循環モデル、土地利用
背景・ねらい 中山間地帯に位置する水田は、洪水緩和、水源涵養等の機能を有するとされ、近年進行する耕作放棄によりこれらの機能の低下が危惧されている。耕作放棄による洪水緩和機能の変化については、これまで圃場スケールでの評価が多く行われてきたが、より広域での変化予測は残された課題となっている。提案する評価法は、耕作・放棄各水田の圃場スケールの流出過程を組み込んだ分布型の流出モデル(流域をグリッドで分割し、各グリッドで流出、蒸発散、水田の作付時期や水利用を推定するモデル;以下流域水循環モデル)を用いて、中山間流域の水田耕作状況の変化と流出特性の関係を評価するものである。
成果の内容・特徴
  1. 耕作放棄に伴う水田の物理特性の変化として、畦畔・法面の崩壊に加え、乾燥時の土壌の収縮と湿潤時の膨潤による粗間隙量の変化があり、乾湿の繰り返しに伴って水田面からの下方浸透能は時間的に変化する。提案する評価法では、耕作水田・放棄水田それぞれの物理特性(水田水尻高、水田浸透能)を、現地調査、観測等により設定する。
  2. 評価法の適用例として、新潟県東頸城丘陵の試験流域(耕作型・放棄型(図1)各流域)での結果を以下の3.~5.で示す。対象地区は重粘性土壌で乾湿による土壌物理特性の変化が特に大きい。また観測された流出特性には、湿潤時に放棄型流域の一雨の流出率が耕作型流域のそれを上回るという特徴がある(図2)。
  3. 対象地区の現地調査に基づき、水田水尻高を放棄水田30mm、耕作水田300mmとした。また水田浸透能は、極端な乾燥および湿潤状態の一筆圃場での観測値から上限値(25mm/d)と下限値(5mm/d)を得て、これを根群域貯留量(グリッド表層の土壌水分量)に応じて線形的に変化するようにモデル化する。
  4. 降雨発生時の乾湿状態をモデル上で表現するため、まず時間間隔1日の長期計算を行い、対象降雨発生時のモデル状態量(水田湛水深、飽和空き容量、根群域水分量)を保存する(図4)。次いで保存したモデル状態量を初期値として時間間隔10分の短期計算を行う。提案モデルにより、湿潤時の放棄型流域における流出の増大を表現できる(図3)。以上のように、流域水循環モデルに耕作放棄に伴う水田の物理特性の変化を反映させることで、流域の水田耕作と流出特性の関係を評価できる。
  5. 流域水循環モデルを用いて試験流域間での短期流出特性の違いについて考察できる。放棄型流域で流出量が増大した降雨前には放棄型流域の飽和空き容量が減少しており(図4)、こうした流域貯留量の差が流出特性の違いの一因と推察できる。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:国、地方自治体、研究機関、民間コンサルタント
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:中山間水田が含まれる流域の排水リスク評価に利用できる。中山間水田(傾斜1/20以上):22万ha、うち約12%が耕作放棄地。
  3. その他:日本型直接支払制度の対象農地の判断や整備水準の細部検討に活用できる。普及方法として、技術移転、本評価法による解析業務の受託が可能。
図表1 236600-1.jpg
図表2 236600-2.jpg
図表3 236600-3.jpg
図表4 236600-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2013/13_071.html
カテゴリ 乾燥 水田 中山間地域 評価法

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