長期間運転したメタン発酵槽内に蓄積する物質の特徴

タイトル 長期間運転したメタン発酵槽内に蓄積する物質の特徴
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2011~2013
研究担当者 中村真人
山岡賢
柚山義人
折立文子
発行年度 2013
要約 メタン発酵プラントを長期的に運転した場合、発酵槽に原料由来の砂の堆積やリン酸マグネシウムアンモニウムなどの析出が起こる。それらを完全に防ぐことは現実的に難しいため、それらを考慮に入れた設計をすることが安定的な運転管理につながる。
キーワード メタン発酵、堆積、析出、MAP、乳牛ふん尿、維持管理、砂
背景・ねらい メタン発酵プラントを長期的に運転した時、発酵槽内で原料由来の堆積や溶存成分の析出が起こることがある。それらの蓄積は、発酵槽の有効容積の減少や発酵槽周辺の配管の閉塞などを引き起こす懸念があるため維持管理上問題であるが、長期運用後に発酵槽に蓄積する物質に関する報告は少ない。そこで、運転開始後7年6ヶ月が経過した、乳牛ふん尿と野菜残渣を原料とするメタン発酵プラント(図1)の発酵槽内に蓄積する物質の分布、量およびその成分を調査し、メタン発酵プラントの設計や維持管理に関する留意点をとりまとめる。
成果の内容・特徴
  1. 発酵槽内で確認された蓄積物として、主に、発酵槽の底部に堆積したもの(以下、「底部堆積物」)、攪拌機およびその支柱などに付着した白色の結晶物(以下、「白色結晶」)などがある(図2)。
  2. 底部堆積物は、攪拌機により吹き寄せられる部分を中心に堆積し、その量は原料投入量の約0.2%に相当する約20m3(約27t)である。その大部分は無機物であり、多くのケイ素が含有し、そのうち、塩酸可溶性成分の割合が低かったことから、大部分は一次鉱物由来のケイ素(砂、土壌など)であり、原料の乳牛ふん尿由来であると考えられる(表1)。乳牛ふん尿には、牧草由来の砂や畜舎に吹き込む土などが入っているため、発酵槽への砂の混入は完全には避けられない。そのため、攪拌機により吹き寄せられる部分への機器の設置は避ける必要がある。また、堆積分を考慮して発酵槽容量を決定する、排出口を設置するなど、砂の堆積を想定した構造とすることが望ましい。
  3. 白色結晶は、攪拌機および攪拌機を固定するための支柱などに3~8mm程度の厚みで付着する。白色結晶の主成分は、発酵液にリン、マグネシウム、アンモニア態窒素が多く含有していること、酸に可溶であることおよび白色結晶の元素の構成比率から、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP、化学式:MgNH4PO4·6H2O)が主成分であると推察される(表1)。
  4. 多量の白色結晶の付着は、攪拌機などの発酵槽内設置した機器の機能低下や機器同士または機器と発酵槽の底面・壁面との固着などが起こる懸念がある。また、結晶の析出を制御することは難しいため、発酵槽の設計に際しては、結晶により発酵槽内の機器が周囲と固着することにより生じる問題(発酵槽内の機器の交換作業などに支障が出るなど)を回避できるような機器の配置を行う必要がある。
成果の活用面・留意点
  1. 本報告で得られた知見をメタン発酵槽の設計に活かすことにより、メタン発酵プラントの安定的な運転につながり、結果として維持管理コストの低減が可能となる。
  2. 本成果は乳牛ふん尿と野菜残渣を原料とするメタン発酵プラントにおける結果である。原料が異なれば、異なる結果となる可能性がある。
図表1 236605-1.jpg
図表2 236605-2.jpg
図表3 236605-3.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2013/nkk13_s05.html
カテゴリ コスト 乳牛

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