アーバスキュラー菌根菌宿主跡のダイズ栽培ではリン酸施肥を3割削減できる

タイトル アーバスキュラー菌根菌宿主跡のダイズ栽培ではリン酸施肥を3割削減できる
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2004~2013
研究担当者 大友 量
岡 紀邦
杉戸智子
唐澤敏彦
岡崎圭毅
建部雅子
酒井 治
谷藤 健
塚本康貴
発行年度 2013
要約 北海道でダイズを栽培する場合、アーバスキュラー菌根菌の宿主植物栽培跡地ではリン酸施肥を現行基準から3割削減可能である。この技術はダイズ収量水準が標準レベルの場合に適用できる。
キーワード アーバスキュラー菌根菌、宿主植物、ダイズ、リン酸肥料、減肥
背景・ねらい 2008年の肥料価格の高騰等を背景に、収量を確保しつつ減肥する技術が求められている。中でもリン酸は高価で、その削減は肥料コストの低減に最も効果的である。アーバスキュラー菌根菌(AM菌)が作物のリン酸吸収を促進する機能はよく知られており、AM菌が共生する植物(宿主:小麦、バレイショ等)の跡地ではダイズの初期生育が促進され、北海道農業研究センター内の圃場ではリン酸減肥しても収量は低下しない(2006年度成果情報)。しかし、生産者圃場でのダイズのAM菌感染程度は未調査であり、また様々な土壌環境・気象条件・圃場管理の現場でAM菌がどの程度リン酸減肥に貢献できるかは未解明である。そこで、道内のダイズ生産地帯におけるAM菌の感染実態を調査し、土着AM菌を活用したダイズのリン酸減肥技術の現場への適用基準を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 道央(水田転換畑地帯・畑作地帯)・道東(畑作地帯)の生産者圃場におけるダイ ズ開花期のAM菌感染率は宿主跡で高く、リン酸施肥量が多いと低下する。土壌が堅密な場合や土壌リン酸含量が高い場合はAM菌感染率が低い(表1)。
  2. 道央・道東の生産者圃場および試験場圃場でのリン酸減肥試験(50例)の結果、ダイズ子実収量相対値(標準区に対する割合)の中央値は、宿主跡ではリン酸5割減肥まで変化しなかった(図1)ことからリン酸減肥が可能である。
  3. リン酸施肥を現行の施肥基準から3割削減する場合、標準施肥量下でのダイズ粗収量が400kg/10a以下であれば減肥による収量低下を5%以下に抑制できる(図2)。粗収量400kg/10aを越える条件では1割以上低下する例が多い。
  4. リン酸5割減の場合、AM菌感染率が40%以下では開花期生育が低下する例が増加するが、3割減では顕著な生育低下は認められない(データ省略)。このことから現状ではリン酸減肥は3割に止めるのが安全である。
  5. 以上よりAM菌宿主跡でのダイズ栽培ではリン酸施肥を3割削減できる。これは道央の火山性土で5kg P2O5/10a、道央の泥炭土で4kg P2O5/10a、道東の火山性灰土では6kg P2O5/10aの削減に相当する。本技術は現行の施肥基準が想定する標準収量(精選子実重量で240-320kg/10a、粗収量で約400kg/10a以下に相当)で推奨される(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:北海道のダイズ栽培農家
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:道央・道東のダイズ栽培地帯2,000ha (2012年のダイズ栽培面積から推定。空知・石狩・上川では水稲跡の割合を20%、十勝ではてん菜跡の割合を40%と仮定。また多収で適用外となる割合を30%、初期生育低下の懸念がある割合を10%と仮定。これらを除く適用可能地域の20%への導入を当面は想定)
  3. その他:北海道農業試験会議(成績会議)(2013)で指導参考として採択
図表1 236644-1.jpg
図表2 236644-2.jpg
図表3 236644-3.jpg
図表4 236644-4.jpg
図表5 236644-5.jpg
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研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2013/13_038.html
カテゴリ 肥料 コスト 小麦 水田 施肥 大豆 土壌環境 ばれいしょ 圃場管理

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