タイトル |
草地更新後に牧草への放射性セシウム移行の低減を維持するためのカリ施肥量 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2011~2013 |
研究担当者 |
渋谷岳
秋山典昭
平野清
進藤和政
山田大吾
山本嘉人
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発行年度 |
2013 |
要約 |
草地更新後の牧草中放射性セシウム濃度を低減するため、土壌交換性カリ含量を維持するには、標準施肥の2倍量以上のカリ施用が必要となる。窒素単肥の追肥は土壌交換性カリ含量が低下し、牧草中放射性セシウム濃度が高まるのでカリ追肥を必ず併せて行う。
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キーワード |
放射能対策技術・移行低減
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背景・ねらい |
東京電力福島第一原子力発電所の事故により、東北~関東の広い地域の草地が放射性物質によって汚染された。草地更新は牧草への放射性セシウム吸収抑制に有効な手段であり、各地で草地を除染するために草地更新が実施されている。これまで、永年草地の維持段階においては、無施肥管理、あるいは窒素のみを施用するといった粗放な管理を行う事例が見られるが、このような管理が、牧草の放射性セシウム濃度に及ぼす影響を解明し、その濃度を低く維持するための肥培管理について明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 草地更新により、新播牧草の放射性セシウム濃度の平均値が暫定基準値である100Bq/kg(水分80%換算)以内となった草地において、目標生草収量を6t/10a(乾物換算で約1t)程度として、窒素・リン酸・カリ成分を同量追肥する標準区、窒素成分のみとした窒素単肥区および無施肥区を比較すると、カリ成分が施用される標準区に比べ、窒素単肥区では放射性セシウム濃度が高く推移する(図1)。また、窒素が施用されない無施肥区では収量が劣る(表1)。これは、草地の生産性を維持する段階において、牧草の放射性セシウム濃度を低減するには、カリ肥料の施用は必須であることを示している。
- 窒素単肥区では、牧草のカリ吸収による圃場外への持ち出しによってカリ収支が大きくマイナスになり(表1)、標準区よりも土壌(0-5cm深)中の交換性カリ含量が低く推移する傾向を示す(図2)。この土壌中交換性カリ含量の低下が、窒素単肥区の牧草中放射性セシウム濃度を増加させる原因として考えられる。
- 事故年から年間のカリ施肥量を標準の2倍量管理とすると、牧草中の放射性セシウム濃度は、標準よりも低く推移する(図3)。しかしながら、カリ2倍区においても、カリ収支は土壌から収奪される傾向がみられ(表1)、土壌交換性カリ含量(0-15cm深、mgK2O/100g乾土)も、44(2012年3月)から28(2013年10月)に低下したことから、土壌交換性カリ含量の維持には、標準の2倍量以上のカリ施肥量が必要である。
- 以上より、草地更新後の目標収量を6t/10a(生草)程度とし、採草持ち出し、堆肥施用をしない条件で、放射性セシウム移行低減のために必要な土壌交換性カリ含量の維持には、少なくとも従来標準施肥の2倍以上のカリ施肥量を要すると考えられる(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 除染事業対象となっている約38,000ha の草地肥培管理に活用できる。
- 実際の肥培管理にあたっては、適宜土壌診断を行って、交換性カリ含量を把握するとともに、各農業指導機関等に相談し、更新草地の土壌条件に応じて行うことに留意する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2013/nilgs13_s37.html
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カテゴリ |
肥料
施肥
土壌診断
肥培管理
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