トビイロウンカの吸汁を阻害する栽培イネの遺伝子(BPH26)を特定

タイトル トビイロウンカの吸汁を阻害する栽培イネの遺伝子(BPH26)を特定
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2007~2014
研究担当者 田村泰盛
服部誠
吉岡博文
吉岡美樹
髙橋章
呉健忠
千徳直樹
安井秀
発行年度 2014
要約 インド型のイネ品種から、イネの重要害虫であるトビイロウンカに対して抵抗性を示す遺伝子BPH26(ビーピーエイチ26)を単離した。BPH26遺伝子を導入したイネでは、トビイロウンカは口針をイネの師管まで挿入するものの、師管液を吸汁できずに餓死することを明らかにした。
キーワード 栽培イネ、トビイロウンカ抵抗性遺伝子、吸汁阻害、BPH26、NBS-LRR
背景・ねらい トビイロウンカはイネの最も重要な害虫の1つで、イネの師管液を吸汁して枯死させることで(図1)、深刻な被害(2013年の国内の被害額は約100億円)をもたらしている。近年、殺虫剤抵抗性を持つトビイロウンカが出現したため、その被害はより深刻になっている。これまでに、インドの栽培イネが持つBPH25BPH26と名付けられた2つの遺伝子が同時に存在すると、現在日本に飛来するトビイロウンカにも抵抗性を示すことが明らかにされていたが、遺伝子は単離されていなかった。これらの遺伝子を利用し、トビイロウンカに対して抵抗性を示すイネ品種を開発・利用することで、殺虫剤の使用量を低減した、環境保全型の低コスト農業が推進できると期待されている。
成果の内容・特徴
  1. トビイロウンカ抵抗性遺伝子BPH26の染色体上の正確な位置を特定して、育種に有効なDNAマーカーを開発し、さらに遺伝子の塩基配列と機能を調べた。
  2. BPH26遺伝子を日本型イネに導入し、トビイロウンカ抵抗性をもつことを証明した。トビイロウンカは針状の口(口針)をイネの師管まで挿入するものの、そこから栄養豊富な師管液を十分吸汁できなくなり餓死した(図2)。BPH26遺伝子を持たない品種と持つ系統にトビイロウンカを放飼すると、BPH26遺伝子を持たない品種のみトビイロウンカに加害されて枯死した(図3、図4)。
  3. BPH26遺伝子がつくるBPH26タンパク質は、イネがカビなどの病原菌を認識するために働くNBS-LRRと呼ばれる構造を保有するタンパク質と似ていた。そのため、BPH26タンパク質はトビイロウンカの加害を認識する働きをしている可能性が示唆された。
成果の活用面・留意点
  1. 2つのトビイロウンカ抵抗性遺伝子(BPH25BPH26)が共存すると、それぞれの遺伝子が単独では効かないようなタイプのトビイロウンカに対しても、抵抗性を示すことが分かっている。
  2. 現在、BPH25遺伝子の育種に利用できるDNAマーカーも作製されつつあり、これら2つの遺伝子のDNAマーカーを用いることで、日本に飛来するトビイロウンカに対して幅広い抵抗性を示すイネの開発が可能となる。
図表1 236878-1.jpg
図表2 236878-2.jpg
図表3 236878-3.jpg
図表4 236878-4.jpg
図表5 236878-5.jpg
図表6 236878-6.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h26/nias02609.html
カテゴリ 育種 害虫 DNAマーカー 抵抗性 抵抗性遺伝子 低コスト 品種

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