タイトル |
遺伝子組換え技術により蛍光タンパク質が高蓄積した「光る花」の開発 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所 |
研究期間 |
2008~2014 |
研究担当者 |
佐々木克友
加藤晃
三島博
古市真木雄
高根健一
山口博康
大坪憲弘
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発行年度 |
2014 |
要約 |
蛍光タンパク質を高蓄積させた観賞性の高い「光る花」の開発に成功した世界初の例である。LED光源と励起/蛍光フィルターの組み合わせを変えることで、目的に合わせた観賞性とコントラストの調整が可能であり、ドライフラワー等での利用も可能である。
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キーワード |
光る花、トレニア、青色LED、蛍光タンパク質、遺伝子組換え
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背景・ねらい |
GFP等の蛍光タンパク質は、遺伝子発現の細胞レベルでの可視化マーカーとして広く一般に利用されているが、花弁などの組織のレベルで簡便に観察できるほど強い蛍光活性を提示する植物は、これまで報告されていない。 本成果は、観賞性の高い「光る花」の作出を通じて、商品としてのこれまでにない価値観の提供、需要の創出を図るものであるほか、蛍光タンパク質のより高度な利用法を提供する。
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成果の内容・特徴 |
- 蛍光タンパク質として、幅広いpHやタンパク質変性条件下で安定な蛍光活性を示す海洋カイアシ類(Chiridius poppei)由来の黄緑色蛍光タンパク質(CpYGFP)を利用する。
- 導入するタンパク質を高蓄積させる配列(AtADH 5'UTRおよびHSPT878)を3重連結した改良型高発現ベクターとCpYGFP遺伝子の組み合わせにより、植物細胞内に蛍光タンパク質を高蓄積させるベクターの開発が可能である(図1A)。
- CpYGFP高発現ベクターを導入したトレニア白花系統では、花弁、雄蕊および雌蕊が良く光るため、蛍光タンパク質を植物全体で発現させても高い観賞性を有する(図1B)。
- 一般的な青色LED光源と蛍光フィルター(市販のオレンジ色アクリル板)の簡易な組み合わせでも観賞性の高い蛍光が観察される(図1B、図2中)。
- 観察の際、さらに励起フィルターを組み合わせ、目的によっては蛍光フィルターを変更する(黄色フィルターなど)ことで完全な自家蛍光の排除が可能であり、研究用途での性能が向上する(図2右)。
- 完全に乾燥させても蛍光活性が維持されるため、ドライフラワーや樹脂封入標本等での利用も可能である(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- トレニアだけでなく、多くの花きに対して同様の形質を付与する技術となる可能性が高い。
- 蛍光タンパク質の励起波長または蛍光波長の光を吸収する色素(アントシアニンなど)を含まない、白花品種での利用が適している。
- 組換え体であるため、カルタヘナ法の政省令に基づいた適切な拡散防止措置の下での取扱いが必要である。
- 花器官特異的プロモーター等との組み合わせにより、花だけを光らせるなどの観賞性改変が期待できるほか、可視化マーカーとして利用することで花器官形成関連遺伝子等の組織レベルでの経時的な非破壊観察が可能となる。
- CpYGFPタンパク質およびこれをコードする遺伝子については、NECソリューションイノベータおよび農業生物資源研究所が知的財産権を有する(特許4863280号)。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/flower/2014/flower14_s02.html
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カテゴリ |
乾燥
トレニア
品種
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