傾斜放牧草地における省力化と省資源化を可能とする新たな施肥法

タイトル 傾斜放牧草地における省力化と省資源化を可能とする新たな施肥法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2002~2014
研究担当者 山田大吾
北川美弥
井出保行
手島茂樹
木戸恭子
江波戸宗大
渋谷岳
東山雅一
山口学
進藤和政
発行年度 2014
要約 傾斜放牧草地では牛の排ふん尿による養分還元が地形面毎で異なり、養分偏在が生じる。被覆尿素を用いて年1回、地形面毎に播き分けを行う施肥法は、年2回の全面施肥と比較して、同等の放牧実績と施肥コストの低減を可能とする。
キーワード 放牧草地、養分偏在、家畜排泄物、省力化、被覆尿素
背景・ねらい 放牧草地の管理において、労働力不足と作業者の高齢化、肥料価格の高止まりの状態が続いており、省力的・省資源的な施肥管理法の確立が急務となっている。本州の放牧草地は山地傾斜地に立地することが多く、傾斜放牧草地では養分の偏在が生じる。放牧草地では牧草の季節生産性を平準化するため、年間に複数回に分けた草地全面への施肥が推奨されている。これに対して本成果情報では、草地内の養分偏在に対応した肥料の播き分けと被覆尿素の利用を組み合わせて、施肥量と施肥回数を大幅に低減する新たな施肥法を提示する。
成果の内容・特徴
  1. 傾斜放牧草地の尾根などの緩傾斜部分では牛が集まりやすく、排ふん尿による養分還元が急斜面(15度以上)より多く見込まれ、窒素は施肥以上となる(図1)。牛への蓄積による系外への持ち出しの少ないカリは草地全体で施肥量を大きく上回る(図1)。そのため、尾根や谷を減肥し、急斜面を中心とする施肥が重要である。
  2. 牧草の季節生産性を平準化する年2回の慣行施肥(6月と8月に施肥)を想定して、慣行施肥の1回目に施用したシグモイド型40日溶出タイプの被覆尿素からは、2回目の施肥時期となる8月にかけて大部分の窒素が溶出される。放牧草地の急斜面では、同被覆尿素と速効性の尿素を併用し(窒素成分で1:1)全窒素施肥量を2割削減した年1回施用でも、慣行施肥法と同等の牧草収量が得られる(図2)。
  3. 以上から、被覆尿素を導入して急斜面のみへ年1回施肥を行う改良施肥法を提示する(図3)。植生、牧養力、面積および地形がほぼ同等の隣り合う2つの放牧草地に本施肥法と慣行施肥法(全面に速効性の窒素,リン酸およびカリを年2回施用)を適用すると、両者の牧草生産量に違いはなく、3年間を通して同等の牧養力が得られる(図3)。
  4. 急斜面の割合が50%程度の放牧草地における試算では、改良施肥法を導入した場合に、慣行施肥法に比べて施肥コストが約50%削減できる(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:牧場管理者、普及指導員
  2. 普及予定地域等:山地傾斜地に立地する、経年利用された放牧草地。
  3. その他:肥料の播き分けに際しては、事前に土壌診断を行うことや放牧牛の排泄が多い場所を確認することも重要である。改良施肥法による省力化と省資源化の効果は尾根、急斜面、谷などの地形面の構成割合や慣行の施肥量などによって変動する。被覆尿素は積算温度の増加とともに窒素を溶出する特性をもつため、導入する場所毎に、気温や想定する窒素溶出時期、製造あるいは販売元が提供する窒素溶出特性の情報を基に使用銘柄を選択する。
図表1 237082-1.jpg
図表2 237082-2.jpg
図表3 237082-3.jpg
図表4 237082-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2014/14_019.html
カテゴリ 肥料 傾斜地 コスト 省力化 施肥 土壌診断

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