タイトル |
牧草中放射性セシウム濃度低減のために、草地更新後もカリ施肥継続は必要 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2011~2014 |
研究担当者 |
渋谷岳
秋山典昭
平野清
進藤和政
山田大吾
山本嘉人
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発行年度 |
2014 |
要約 |
草地更新による除染を行った採草地は、更新後も適切なカリ施肥の継続が必要である。カリ施肥を怠り、交換性カリ含量が大きく低下すると、牧草中の放射性セシウム濃度は再び暫定許容値を超えることがある。
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キーワード |
草地更新、牧草、カリ施肥、交換性カリ、放射性セシウム
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背景・ねらい |
土壌中の交換性カリ含量(0-15cm深の目標:30-40mg-K2O/100g乾土)を高めて行う草地更新は、牧草の放射性セシウム吸収抑制に有効な手段であり(2012、2013年度普及成果情報)、各地の除染事業において実施されている。一方、従来の永年草地の維持段階においては、無施肥管理、あるいは窒素のみを施用するといった粗放な管理を行う事例が見られるため、このような管理が経年的に牧草中放射性セシウム濃度に及ぼす影響を解明する。
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成果の内容・特徴 |
- 草地更新後にカリを含む追肥を行う標準施肥区とカリ追肥を行わない窒素単肥区の牧草中放射性セシウム濃度については、窒素単肥区は標準区よりも高い濃度を示し、更新後利用3年目から急激に濃度が上昇、暫定許容値を超える(図1)。
- 通常、草地の維持段階での土壌診断は0-5cm深で行われ、その交換性カリ含量は、更新後利用2年目には各試験区とも低下し、特に窒素単肥区では大きく減少する(図2)。
- 標準施肥区のカリ持出量はカリ施肥量よりも大きく、2013年以降、施肥によるカリ供給量に対して2倍以上となる一方、窒素単肥区では乾物収量が標準施肥区より少ないため、カリ持出量は標準区よりも少ない(表1)。カリ収支では、基肥分を加えても、更新後利用1年目で早くもマイナスを示し、特に窒素単肥区はその程度が大きい(表1)。また窒素単肥区では、2013~2014年の土壌(0-15cm深)中交換性カリ含量も6~13mg-K2O/100g乾土にまで低下しており(図表省略)、土壌中交換性カリ含量の低下が牧草中放射性セシウム濃度上昇の原因となっている。
- 以上から、除染済み更新草地の維持段階において、牧草中放射性セシウム濃度抑制に必要な土壌中の交換性カリ含量の維持には、牧草によるカリ持出量を考慮した適切なカリ施肥の継続が必要である。目標乾物収量を年1t/10a程度とした場合は、カリ収支から見て、標準施肥区の3倍量(K2O=45kg/10a/年)程度のカリ追肥により、土壌中の交換性カリ含量の維持が可能と試算される。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:放射能汚染地域の除染済み永年草地を利用する畜産農家、公共牧場管理者および草地除染を推進する行政担当者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:除染事業対象草地を有する県
- その他:既に一部内容は国および県作成の草地除染マニュアル等に活用されている。実際の肥培管理にあたっては、適宜土壌診断を行って、交換性カリ含量を把握するとともに、各農業指導機関等に相談し、更新草地の土壌条件に応じて行うことに加え、牧草中のカリウム濃度が高まることに留意する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2014/14_079.html
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カテゴリ |
施肥
土壌診断
肥培管理
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