湛水期間延長による代かき濁水に伴う放射性セシウム流出の削減効果

タイトル 湛水期間延長による代かき濁水に伴う放射性セシウム流出の削減効果
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2013~2014
研究担当者 人見忠良
吉本周平
久保田富次郎
濵田康治
申文浩
発行年度 2014
要約 水田において代かき後の湛水期間延長による放射性セシウムの流出削減効果を現地試験により評価する。本試験条件では、代かき濁水に伴い流出する放射性セシウムの表面排水負荷量は、湛水期間延長手法により6割削減できる。
キーワード 放射性セシウム、水田、代かき濁水
背景・ねらい 水田からの代かき濁水の流出は土壌に沈着した放射性セシウム(RCs)の下流域への拡散や滞留性水域への局所的な蓄積を助長する危険性があり、RCs汚染流域内の除染計画や安全性の検討を行う上で、その特性を把握することは重要である。代かき濁水の発生は、代かき後から表面排水までの期間の延長(湛水期間延長)等の水管理手法によって抑制される。本研究では、湛水期間延長手法によるRCs流出の削減効果を現地試験により評価する。
成果の内容・特徴
  1. 試験は代かき後の湛水期間を変化させた荒代-1日区、植代-1日区、および植代-延長区の3試験区で実施する(表1)。
  2. 植代-延長区のRCsの表面排水負荷量は植代-1日区に比較して57%減少するが、これは主に植代-延長区の表面排水中のRCs濃度が植代-1日区に比較して平均で0.4倍に低下するためである(表2)。また、植代-1日区や植代-延長区のRCsの表面排水負荷量が荒代-1日区に比較して大きいのは、荒代かき後より植代かき後において表面排水中のRCs濃度が高いこと、表面排水量が大きいこと、の2つの要因による(表2)。
  3. 植代かき直後の田面水中のRCs濃度(77Bq/L)は時間経過とともに低下し、15h後には53%、39h後には90%低下する(図1)。また、代かきを2回(荒代かき+植代かき)実施することで、1回のみ(荒代かきのみ)実施する場合より田面水中のRCs濃度の上昇幅は大きい(図1)。このため、植代かき後2日程度は表面排水を実施しないことで、RCs濃度の高い田面水の排水を防止できる。
  4. 表面排水中のRCs濃度と懸濁態物質(SS)濃度とは正の相関を有しているため(図2)、代かき後の表面排水中のRCs濃度の上昇はSS濃度の上昇に起因すると考えられる。
  5. 表面排水中のSS成分の平均RCs濃度は2.0×104Bq/kg~3.8×104Bq/kgである。これらの値は試験圃場の作土(深度0~15cm平均)のRCs濃度より3~6倍高い。代かき後の田面水では、比較的RCs濃度の低い粗粒の画分が速やかに沈降し、粘土を含むRCs濃度の高い細粒の画分が水中に分散・残留すると考えられ、RCs濃度の高いSS成分の拡散を抑制する上で、湛水期間延長手法は有効である。
成果の活用面・留意点
  1. RCs汚染流域内における水田からのRCs流出量の推定に活用できる。
  2. 試験圃場は福島県福島市に位置し、圃場の土壌は灰色低地土である。本結果は試験区を設定した特定圃場における観測値であり、土壌条件(RCs濃度、減水深)や代かき時の条件(代かき時間、湛水深、耕耘機の能力)によってRCsの流出量は変化する。
図表1 237179-1.jpg
図表2 237179-2.jpg
図表3 237179-3.jpg
図表4 237179-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2014/nkk14_s23.html
カテゴリ 水田 水管理

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