タイトル |
土中の放射線強度の鉛直分布測定装置 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2014~2015 |
研究担当者 |
濵田康治
白谷栄作
久保田富次郎
佐瀬隆聡
岩城彰朗
菅野勉
鈴木元和
生沼優
石川貴規
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発行年度 |
2015 |
要約 |
ため池底質中などの土中の放射線強度の鉛直分布を2.5cm刻みで最大50cmの深さまで現地にて迅速に測定できる装置である。測定結果をソフトウェアで解析することで、土中の放射性物質濃度の鉛直分布を推定することができる。
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キーワード |
放射能汚染、放射能、放射性物質濃度、鉛直分布
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背景・ねらい |
東京電力福島第一原子力発電所の放射性物質放出事故によって汚染されたため池底質等の土中の放射性物質を除去又は低減するための取組が進められている。その際、汚染された状況を把握するために、放射性物質の表面分布や鉛直分布を測定する必要があるが、現状では、未攪乱柱状サンプルを実験室に持ち帰って放射性物質濃度を測定しており、多くの時間と労力を要する。このため、ため池底質等の土中の放射性物質濃度の鉛直分布を短時間で測定する手法が求められている。開発した装置は、現地においてため池底質などに挿入して短時間で放射能の鉛直分布を推定することが可能な測定機器であり、従来法と組み合わせることで面的に測点数を増やしたより詳細な調査を可能とする。
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成果の内容・特徴 |
- 開発した放射線測定装置は、土中の深さ別の放射線強度分布を現地にて検出可能である。主に、放射線強度を検出するセンサー部と、検出結果から深さ別の放射性物質分布を推定するソフトウェアで構成される(図1、写真1)。
- 長さ50cm、直径2.4cmのセンサー部には、2.5cm間隔で20個のヨウ化セシウム(CsI)を使った検出器が一列に並んで搭載されている(図1)。センサー部を土中に直接挿入すると、各検出器により放射線を2.5cm間隔で最大約50cm深さまで測定できる。
- 各検出器には、検出器と同じ深さに存在する放射性物質だけではなく、異なる深さに存在する放射性物質から放出された放射線も到達する。このため、開発したソフトウェアにより異なる深さに存在する放射性物質の影響を排除して深さ別の放射能分布を解析する。解析では、検出器が影響を受ける距離内にある放射線源からの到達する線量を、到達距離や通過する土などの密度に応じた減衰率を考慮して算出した積分値とし、本装置による検出値と比較することで推定値を導く。
- 汚染されたため池の底質を本装置で検出・解析した推定値の鉛直分布特性が、従来法により測定した鉛直分布特性と同様の傾向を示す(図2)。なお、図2aは検出した放射線強度の鉛直分布と解析した推定値の鉛直分布、図2bは解析結果を5cm刻みに整理した結果、図2cは従来法により5cm毎に測定した137Cs濃度の鉛直分布である。
- 本装置による推定結果は従来法により測定した137Cs濃度との高い相関がある(図3、R2=0.81)。この相関を利用することで放射性物質濃度に換算することが可能である。
- 示した結果を得るのに要した時間は、測定時間が3分、解析時間が1分以下である。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:放射性物質による汚染状況を調査する担当者など
- 普及予定地域:放射性物質による汚染が生じている地域
- その他:「挿入式多深度放射線測定器MSP (Multi Scintillation Pike)」として市販されている。より精度の高い結果を得るためには、環境に応じた従来法による測定結果との比較検定や、現地の底質密度を反映させる必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2015/15_94.html
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カテゴリ |
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