タイトル |
水田等の農地の除染作業の効率化が可能なトラクタ装着式表土削り取り機 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター |
研究期間 |
2012~2014 |
研究担当者 |
宮原佳彦
重松健太
市来秀之
宮崎昌宏
八谷満
紺屋秀之
落合良治
細川寿
伊吹俊彦
戸田勉
中村隆三
林哲昭
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発行年度 |
2015 |
要約 |
水田等の表土を幅2mで深さ8cm程度まで削り取ると同時に畝状に集積するトラクタ装着式の表土削り取り機である。農地除染作業で使用される自走式の表土削り取り同時掬い上げ機(スキマー)やパワーショベル等と連携して効率的な作業が可能である。
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キーワード |
表土削り取り、トラクタ作業機、農地除染、スキマー、放射能汚染
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背景・ねらい |
東京電力福島第一原子力発電所事故で放出され、農地に降下した放射性物質は、その多くが農地の表土付近に集積しているため、農地の除染作業では表土の削り取り作業を実施する地域が多い。この作業には、主にパワーショベルやダンプトレーラ等の建設用機械が使用されているが、作業速度が遅く、対象農地も広大であることから、作業能率の向上が求められている。そこで、農地で使用する農用トラクタを利用し、機動性が高く、効率的な作業を可能にする表土削り取り機を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 開発した表土削り取り機(以下、開発機)は、作業速度0.1~0.2m/s程度が可能(クリープ変速付き)なトラクタ(機関出力64kW(85PS)以上)に装着して使用する作業機である(表1)。同機は、L字型爪48本を配列した表土切削部、搬送オーガおよび表土切削部の前後に設置された2本の鎮圧ローラで構成される。(図1)
- 表土切削部では、設定された削り取り深さでL字型爪が作用して、表土を平坦に削り取り、後方の搬送オーガに削土を放出する。削土は、搬送オーガで機体中央に搬送され、集土排出口より連続的に排出され、断面が台形状の畝が形成される。鎮圧ローラは、後側ローラの高さを前側ローラよりも0~8cm低く設定でき、ローラ接地位置の高低差により、表土切削部の作用深さ(削り取り深さ)を調節する。(図1、図2-a)
- 開発機の作業速度は、設定削り取り深さ5cm以下では0.2m/s(0.7km/h)、同5~8cm(最深)では0.1m/s(0.4km/h)を標準とし、往復作業時の作業能率は、前記の速度毎に0.8と1.4h/10a程度である。削り取り深さの誤差は、表土の硬度、水分、凹凸、雑草等の表面残渣の処理状況等の影響で大きくなる傾向にあるが、設定5ないし8cmで概ね1cm以内の誤差で作業が可能である。(表2)
- 飯舘村の水田で開発機による表土削り取りを行った結果、作業前の空間線量率0.23μSv/h(地上1cmコリメータ法)が5cm削り取り後に0.08μSv/hとなり、約65%低減した。
- 開発機導入先(飯舘村)での作業記録(平成27年5~10月)によれば、深さ5cmの表土削り取り作業の作業能率は、スキマー単独で平均4.5h/10a程度(ダンプトレーラでのほ場内運搬・集積含む)であり、開発機の作業(1.7h/10a)後のスキマー利用(図2)では2.3h/10a程度(ほ場内運搬・集積含む)となり、作業の効率化が可能である。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:除染を目的とした農地の表土削り取り作業を行う事業者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:国が定める除染特別地域(福島県内11市町村)における除染作業未実施農地・約5,000ha(2015年12月現在)等。10台/年。
- その他:2015年3月より市販化され、現在までに10台普及(福島県川俣町、飯舘村等の除染事業区で稼働)。なお、トラクタのタイヤ跡が残らない程度に表土が乾燥し、地表の凹凸および植物や残渣などの少ない条件で作業することが好ましい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/brain/2015/15_100.html
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カテゴリ |
病害虫
乾燥
くり
雑草
市販化
水田
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