タイトル |
小規模サトウキビ栽培をもとにしたエタノール生産のライフサイクルアセスメント |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
中島隆博
|
発行年度 |
2015 |
要約 |
種子島における小規模サトウキビ栽培をもとにしたエタノール生産を想定したところ、化石エネルギー消費量、温室効果ガス排出量は大規模栽培にもとづくブラジルの値を上回るものの、エネルギー効率は依然として様々な国・地域で報告されているその他作物の値よりも優れていた。
|
キーワード |
ライフサイクルアセスメント(LCA)、サトウキビ、小規模栽培、バイオエタノール
|
背景・ねらい |
サトウキビ由来のエタノールは、化石燃料枯渇や地球温暖化といった環境影響の観点から他の作物より望ましいとされてきた。たしかに、サトウキビには豊富なバイオマス、糖の蓄積、バガスの熱利用といった特長があるが、これまでの報告はブラジルなど大規模栽培によって象徴される国・地域を対象としたものが多かった。そこで、種子島におけるサトウキビ小規模栽培をもとにしたエタノール生産を想定し、LCAを実施した。
|
成果の内容・特徴 |
- サトウキビ栽培からエタノール工場の出口までをシステム境界とし(図1)、化石燃料枯渇や地球温暖化に関するインベントリを作成した。サトウキビ栽培段階については主にローカルデータを用いた。
- 1Lのエタノールをサトウキビから生産するために要する化石エネルギーは7.22MJであり、ブラジルの値(Macedo et al., 2004)の2.6倍だった(図2)。サトウキビの栽培段階で使用する肥料や農業機械の製造プロセスで大きな差が見られた。前者については種子島の肥料投入量(特に窒素肥料)が多いこと、後者については小規模経営を反映し、種子島の機械稼働率が低いことが要因と考えられた。また、圃場作業プロセスにも大きな差が見られた。
- 1Lのエタノールをサトウキビから生産するために排出される温室効果ガスは0.667 kg CO2-eqであり、ブラジルの値の1.8倍だった(図3)。2で述べた要因由来の排出量に加えて、窒素肥料由来の亜酸化窒素排出量も多かった。しかし、ブラジルでは手収穫を容易にするための収穫前焼却が温室効果ガス(メタン、亜酸化窒素)の排出量を高めており、化石エネルギー消費量の場合と比べ、種子島との差が小さかった。
- エネルギー産出/投入比率は3.2~3.5であり、ブラジルの値(8.3)を下回るものの、様々な国・地域で報告されているその他作物の値を上回った(例、トウモロコシ1~2、小麦1~4、甜菜1~2.5)。小規模栽培という地域特性を考慮してなお、サトウキビはエタノール原料として有望であることが示された。
|
成果の活用面・留意点 |
- 南西諸島の農家や製糖会社に代表されるステークホルダーがサトウキビ産業をはじめとする将来の農業のあり方をめぐる意思決定を行うための参考資料として利用できる。
- エタノール変換については、糖の全量エタノール変換を想定し、ブラジルの値をもとにインベントリを作成した。小規模プラントを前提とすることで結果は変化しうる。
- より多角的にサトウキビ栽培を評価するためには、酸性化、富栄養化、土地利用をはじめとする環境影響評価項目を加え、それらのインベントリを整備する必要がある。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2015/narc15_s37.html
|
カテゴリ |
肥料
経営管理
さとうきび
とうもろこし
|