ニホンナシ交配後代集団における形質分離の予測法

タイトル ニホンナシ交配後代集団における形質分離の予測法
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 岩田洋佳
林武司
寺上伸吾
高田教臣
斎藤寿広
山本俊哉
発行年度 2015
要約 ニホンナシ品種集団の形質値とマーカー遺伝子型をもとに育種価を予測する統計モデルを構築し、シミュレーションで生成した品種間交配後代個体の仮想遺伝子型に本モデルを適用することにより、後代集団の形質分離が予測できる。
キーワード ニホンナシ、果樹、形質分離予測、育種シミュレーション
背景・ねらい ナシなどの果樹の育種では、既存品種を用いたいくつかの交配組合せから得られた多数の後代(F1)個体を育成し、形質評価を行って優良な個体を選抜することにより、新品種が作出される。世代間隔の長い果樹では、形質評価に数年を要し、また交配組合せによっては有望な個体が出現しない場合もあり、育種コストが多大となる。近年、各種作物において、ゲノム全体に配置された多数のマーカー情報を用いた高精度の形質予測が可能となっている。そこで、ニホンナシにおいて、既存品種の集団をもとに形質予測のモデルを構築し、品種間交配で得られると期待される仮想的な後代個体のマーカー遺伝子型をシミュレーションによって生成し、構築されたモデルを適用して育種価を算出することにより、交配後代集団の形質分離を予測する手法を開発する。本手法により有望な個体を含む確率の高い交配組合せを選択することが可能となり、果樹の育種効率の向上が期待される。
成果の内容・特徴
  1. ニホンナシ84品種について、収穫期と果実重の段階評価されたデータ、および333個のマーカー(330個のSSRマーカーと3個の遺伝子マーカー)のデータを用いて、収穫期と果実重の育種価に対する予測モデルを構築する(図1)。
  2. 84品種から2品種を選んで交配したときに得られる後代個体のマーカー遺伝子型を、連鎖地図の情報やハプロタイプを考慮してシミュレーションによって生成する。
  3. 2で生成した仮想的なマーカー遺伝子型に図1の予測モデルを適用して、後代個体における収穫期と果実重の予測育種価を算出することにより、特定の交配組合せの後代集団における収穫期と果実重の形質分離を予測する。
  4. 「あきあかり」と「太白」の交配に着目し、シミュレーションにより生成された交配後代1000個体のマーカー遺伝子型に予測モデルを適用して算出された収穫期と果実重の予測育種価のプロットが図2aに示されている。また、この交配から得られた実際に育成されている後代個体の収穫期と果実重の表現型値のプロットは図2bに示されている。予測値と実測値の分離パターンは良く似ており、国内の主要品種「幸水」よりも収穫期が早く、かつ果実重が大きい個体の割合は、予測値では0.6%、実測値では1.1%であり、本手法が高い予測精度を持つことを示す。
成果の活用面・留意点
  1. 特定の交配組合せにおいて、設定された育種目標に見合う有望な個体の出現する確率の評価が可能である。
  2. 有望な個体の出現確率にもとづいて交配組合せを選択することができるため、無駄な交配組合せを避けることにより育種のコストが削減できる。
  3. 本手法はニホンナシの他にも品種間交配の次世代の個体を育成して新品種を作出する他殖性作物の育種に適用できるが、品種間交配の後にさらに自殖で世代を重ねて選抜を行う自殖性作物の育種への適用においては育種法に見合った適当な修正が必要となる。
図表1 237604-1.gif
図表2 237604-2.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2015/narc15_s29.html
カテゴリ 育種 コスト 新品種 品種

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