ダイズの収量補償作用は欠株による減収を補填しない

タイトル ダイズの収量補償作用は欠株による減収を補填しない
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 髙橋真実
大野智史
髙橋明彦
中山則和
山本亮
関正裕
発行年度 2015
要約 「エンレイ」を重粘地の水田転換畑で、畝幅75cm、株間15cmで栽培する場合、欠株が生じると隣株のみ増収する。しかし、1株単独の欠株の両隣の増収は1株分の収量の42%に過ぎない。収量補償作用は不十分で、1株の欠株でも収穫量は減少する傾向にある。
キーワード ダイズ、欠株、収量補償作用、減収、水田転換畑
背景・ねらい 北陸地方では、ダイズ茎疫病などの立枯性病害はしばしば苗立ち時に発生して、発病株のほとんどは枯死して欠株となる。ダイズの補償作用は高いとされ、欠株数が少ない場合には減収しない可能性が示されている(Caviness 1961, Pendleton & Hartwig 1973)。しかし、これは、試験区内の合計収量を比較した結果であり、補償作用を発現してない株の収量も加算され、補償作用による増加分が不明瞭となった可能性がある。そこで、収量補償作用を正確に評価するため、人為的に欠株を生じさせた圃場で、株ごとに収量を精査し、補償作用が現れる株と欠株との位置関係および欠株の数の変化と周辺株の収量補償作用の関係を解析する。これにより、発病等により生じる欠株について、減収の有無が明らかになる。
成果の内容・特徴
  1. ダイズ「エンレイ」の収量補償作用が正確に評価可能となる手法で試験をおこなう。具体的には、図1のように、並んだ14株を3畝合わせた合計42株を1試験区とする。欠株のない対照区と欠株の連続数が異なる3種類の処理区(1欠株区、2欠株区、4欠株区)を圃場内に20区画ずつ無作為に配置する。欠株の両隣畝の6株と欠株の両隣の5株目までの整粒重を株ごとに調査し、各処理区の位置の異なる株ごとに平均整粒重を対照区と比較する(試験I、2012年度実施)。2014年度も試験Iとほぼ同様な試験をおこなう(試験II)。但し、処理区は、1欠株区~5欠株区の5種類を16区画ずつ配置し、欠株の両隣の3株目まで、両隣畝の1株を調査する。
  2. 試験Iと試験IIの両方とも、全ての処理区で欠株の隣株(調査株A)のみ平均整粒重の増加が認められ、欠株の連続数が増加するにつれて、隣株の平均整粒重が増加する傾向がある(図2、表1)。他の調査株や隣畝の調査株では整粒重が増加しない(図2、図3)。
  3. 1株単独で欠株となった場合、両隣の増収量を合わせても、対照区の株あたり平均整重量の42%にしか過ぎない。欠株の連続数とともに欠株の隣株の整粒重は増加するが、その量はわずかであり、欠株数が増えるとますます減収する(表1)。これらの結果から北陸地方での栽培においては、ダイズの収量補償作用は、欠株による減収を補填するには不十分であり、1株単独の欠株でも収量は減少する傾向にある。
成果の活用面・留意点
  1. 試験結果は、苗立ち時に立枯性病害が発生した圃場は、発病株数が少ない場合でも減収していることを示す。
  2. 立枯性病害による欠株の場合には、発病株の残渣から感染が広がるなどしてさらに減収する可能性がある。
  3. 前作が水稲であった北陸研究センター内の「エンレイ」の圃場で、初生葉展開期までに間引き、補植して予定外の欠株ない状態でおこなった試験である。試験Iの収量は320.9g/m2、試験IIの収量は289.8g/m2である。
図表1 237628-1.gif
図表2 237628-2.gif
図表3 237628-3.gif
図表4 237628-4.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2015/narc15_s05.html
カテゴリ 水田 水稲 大豆

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