タイトル |
ダイズペクチンメチルエステラーゼは蒸煮大豆の硬さに関与する |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所 |
研究期間 |
2010~2015 |
研究担当者 |
戸田恭子
平田香里
羽鹿牧太
増田亮一
安井健
高橋浩司
山田哲也
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発行年度 |
2015 |
要約 |
ペクチンメチルエステラーゼのホモログであるダイズ遺伝子Glyma03g03360には、少なくとも4つの多型が存在する。このタンパク質が、酵素活性に重要なアミノ酸を含むC末端部位を欠失すると、蒸煮大豆は柔らかくなる。
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キーワード |
ダイズ、蒸煮大豆、ペクチンメチルエステラーゼ
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背景・ねらい |
煮豆、納豆、味噌などの大豆加工食品の加工適性においては、蒸煮大豆(煮豆)の硬さが重要視されている。蒸煮大豆の硬さについては品種間差が存在することが知られており、成分分析を中心に研究が進められてきたが、その要因は明らかになっていない。そこで、本研究では、蒸煮大豆の硬さが異なる「納豆小粒」 と「兵系黒3号」の組換え自殖系統(RILs)を用いて、DNAマーカーを用いた遺伝解析により、両者の差に寄与する原因遺伝子を特定する。
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成果の内容・特徴 |
- 大豆品種「納豆小粒」と「兵系黒3号」のRILsを用いた解析より、蒸煮大豆の硬さに関するQTL(qHbs3-1)の候補遺伝子はGlyma03g03350、Glyma03g03360の2遺伝子に絞られる(図1)。さらにDNA配列と遺伝子発現解析より、qHbs3-1はGlyma03g03360であると結論付けられる。
- ペクチンメチルエステラーゼのホモログであるGlyma03g03360では2品種間で翻訳領域(ORF)の配列に1塩基の多型があり、「兵系黒3号」ではタンパク質のC末端部位が欠失する(図2)。
- さらに22品種を解析した結果、Glyma03g03360の配列には納豆小粒型、兵系黒3号型の他にさらに2パターンが検出される。それら遺伝子型をA、A 、B、B とする(図2、表1)。A 型では相同性の低いスレオニンがセリンに変化し、B 型ではC末端部位が欠失する。
- .東北農研(秋田)、作物研(茨城)、九州沖縄農研(熊本)の試験圃場で栽培された2013年産大豆において、Glyma03g03360の失活が推測されるB及びB 型の大豆品種は、A及びA 型の大豆品種より蒸煮大豆が有意に柔らかい(図3)。なお、A型とA 型、もしくはB型とB 型の間には有意な差は検出されない(図表省略)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本実験では、20℃で20~24時間浸漬した後、沸騰水中で10分間加熱した大豆種子の破断応力を硬さの指標としている。
- 本研究で明らかにした24品種のGlyma03g03360遺伝子型情報は、加工適性を考慮した品種育成において有用である。
- Glyma03g03360の多型情報は、蒸煮大豆硬さ判定用のDNAマーカー開発に役立てられる。
- 遺伝子の配列情報はデータベース(Daizu base、Soybase等)より入手できる。その他RILsの解析情報等は2014年度研究成果情報「蒸煮大豆の硬さに関与するQTLの同定とDNAマーカーの開発」参照のこと。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nics/2015/nics15_s04.html
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カテゴリ |
加工
加工適性
大豆
データベース
DNAマーカー
品種
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