イネSPW1遺伝子の新規アミノ酸置換型変異により閉花性を安定化できる

タイトル イネSPW1遺伝子の新規アミノ酸置換型変異により閉花性を安定化できる
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2007~2015
研究担当者 吉田均
Fabien Lombardo
黒木慎
姚善国
清水博之
池ヶ谷智仁
木水真由美
大森伸之介
秋山高
林高見
山口知哉
小池説夫
矢頭治
発行年度 2016
要約 イネ閉花性変異体spw1-cls1は開花せず稔実するため、自然交雑の抑制に有用であるが、穎花形成時の低温条件により開花することがある。spw1-cls1とは異なるSPW1遺伝子のアミノ酸置換型変異の利用により、低温条件でも安定な閉花性を付与できる。
キーワード イネ、閉花受粉、SPW1遺伝子、鱗被、花粉飛散、突然変異
背景・ねらい イネの多様な品種群を同時に栽培・管理する際の自然交雑を抑制するため、開花せず稔実する閉花性変異体が有用である。spw1-cls1は、転写因子SPW1のアミノ酸置換変異(第45位のイソロイシンがスレオニンに置換するI45T変異)に起因する機能低下により、開花を引き起こす花器官である鱗被の形態が変化し閉花性となるが、低温条件では開花することがある。そこで本研究では、低温条件でも開花しないイネを作出するため、I45Tとは異なるSPW1タンパク質のアミノ酸置換変異により閉花性を安定化できるかを検証する。
成果の内容・特徴
  1. SPW1(以下、タンパク質名はブロック体大文字で表記)はパートナーの転写因子MADS2との二量体として標的DNA配列に結合し、鱗被と雄蕊の形態を決定する機能を持つ。cls1型のSPW1(SPW1I45T)ではMADS2との結合能が低下するため、鱗被形成が阻害され閉花性となるが、低温下ではこの結合能が回復し、開花する。そこで、SPW1 cDNAにランダムな変異を導入したライブラリーから、SPW1I45TよりもMADS2との低温下での結合能が回復しづらいクローンをツーハイブリッド(Y2H)法によって選抜し、変異箇所を同定した(図1)。
  2. これらの変異箇所を導入した改変型SPW1ゲノム遺伝子を構築し、SPW1遺伝子の機能欠失アリルであるspw1-1変異体に導入した。改変型SPW1導入系統では、spw1-cls1と類似の鱗被形態が観察され(図2)、一部の系統では低温下での開花が抑制される。cDNAへのランダム変異導入とY2H法による選抜を利用し、閉花性を安定化させるアミノ酸置換変異を同定できる。
  3. 一方、化学変異原処理したイネ突然変異体集団から新たに同定したspw1-cls2変異体においても、spw1-cls1とは異なるSPW1遺伝子のアミノ酸置換型変異(G27R)により鱗被の形態が変化し、低温条件でも開花しない(図2、3)。
  4. cls2型SPW1(SPW1G27R)とMADS2との結合能は野生型(SPW1WT)と同等であるが、標的DNA配列への結合能は低下している(図4)。
  5. 以上の結果により、SPW1-MADS2二量体の結合能低下または標的配列への結合能の低下を指標にしてSPW1遺伝子のアミノ酸置換型変異を選抜することで、閉花性を安定化させることができる。
成果の活用面・留意点
  1. 作出した改変型SPW1導入系統のうち、低温下でも安定な閉花性を示した系統、およびspw1-cls2では、野生型に比べて稔実率が低かったため、閉花性を安定化させつつ、より高い稔実率を有する系統を得るためには、有望アミノ酸置換変異をさらに探索する必要がある。
  2. 本研究成果は、糯品種や有色素品種などにおける交雑防止技術を確立するための参考となる。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2016/nias16_s10.html
カテゴリ 栽培技術 受粉 品種

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