β-グルカン含量が極めて高く、炊飯後に褐変しにくいもち性六条裸麦新品種候補「フクミファイバー」

タイトル β-グルカン含量が極めて高く、炊飯後に褐変しにくいもち性六条裸麦新品種候補「フクミファイバー」
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター
研究期間 2008~2018
研究担当者 高橋飛鳥
吉岡藤治
杉田知彦
長嶺敬
柳沢貴司
発行年度 2018
要約 「フクミファイバー」は、amo1遺伝子とアミロース欠失のもち性遺伝子を併せ持ち、β-グルカン含量が極めて高い六条裸麦である。整粒収量が高く、プロアントシアニジン欠失遺伝子(ant28)も有し、炊飯保温後の色相変化が少ない。
キーワード ハダカムギ、多収、もち性、高β-グルカン、プロアントシアニジン欠失
背景・ねらい 大麦には水溶性食物繊維のβ-グルカンが豊富に含まれており、もち性大麦(もち麦)はうるち性よりβ-グルカン含量が高く食感も良いことから、近年急激に需要が伸びている。西日本農研でこれまでに育成したもち性裸麦品種「ダイシモチ」と「キラリモチ」はうるち性の普及品種と比べると収量性が低い。またこれまでに育成された極高β-グルカン含量品種・系統は、いずれも"しわ粒"で粒の充実が悪く整粒歩合が劣るという欠点があった。
そこで、極高β-グルカン含量でありながら整粒歩合が良く、「キラリモチ」のようにプロアントシアニジン欠失で炊飯麦が褐変しにくい、多収のもち性裸麦品種を育成する。
成果の内容・特徴
  1. 「フクミファイバー」は、高β-グルカン含量・もち性・プロアントシアニジン欠失を育種目標として、「GlacierAC38」由来のamo1遺伝子と「四国裸97号」由来のwax遺伝子を持つ「四R系3755」を母親、「ant28-2131」由来のant28遺伝子を持つ「四系9814」を父親として交配を行い、系統育種法により育成した渦性の六条裸麦である。
  2. 播性程度はVで、「イチバンボシ」よりも出穂期で1日、成熟期は3日程度遅い(表1)。
  3. 「イチバンボシ」と比べ、稈長・穂長がやや長く、穂数が多い。容積重・千粒重はやや軽く整粒歩合が低いが、整粒収量は高い(表1)。
  4. オオムギ縞萎縮病には強いが、うどんこ病・赤かび病には罹病し、穂発芽性は"易"である(表1)。
  5. アミロース欠失のもち性であり、amo1(高アミロース)遺伝子も併せ持つと推定される(図1)。
  6. このためβ-グルカン含量が極めて高く(従来のもち性品種の約2倍、うるち性品種の約3倍)、従来のもち性品種と比べても、穀粒硬度が高く、60%歩留まり搗精時間が長く、砕粒率が低い(表1、表2)。
  7. 精麦白度は低いが、ant28遺伝子を持つプロアントシアニジン欠失系統であり、炊飯後の褐変程度が極めて少ない(表2、図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 栽培上の注意点として、交雑を避けるため他品種と隣接して栽培しない。成熟期がやや遅く、穂発芽性が"易"であり、外観品質もやや劣るので、適期播種・適期収穫に努める。
  2. 兵庫県福崎町と岡山県美作市において、既存の"もち麦"品種とは異なる新たな高付加価値の大麦原料として加工利用するために2019年産から作付けしており、今後は需要を見極めながら生産拡大を図る予定である。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/warc/2018/warc18_s11.html
カテゴリ 育種 萎縮病 うどんこ病 大麦 加工 高付加価値 しわ粒 新品種 生産拡大 播種 はだか麦 品種

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