水稲の登熟期におけるセシウムの体内分配動態とカリ施肥の影響

タイトル 水稲の登熟期におけるセシウムの体内分配動態とカリ施肥の影響
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター
研究期間 2014~2018
研究担当者 石川淳子
藤村恵人
近藤始彦
羽田野麻理
後藤明俊
信濃卓郎
発行年度 2018
要約 水稲各部位におけるセシウム濃度は登熟期に大きく変動する。葉身では他の部位へ転流され濃度が低下するが、最上位節間(穂首)では大きく増加する。カリ施肥量の減少はセシウム吸収量を増加させるだけでなく、玄米への分配割合も増加させる。
キーワード 水稲、セシウム、体内分配、カリ施肥、分配割合
背景・ねらい 2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により多くの農地が放射性セシウム(134Cs、137Cs)で汚染された。被災地の営農促進と消費者の食品を介した内部被曝の低減を目指し、土壌から作物への放射性セシウムの移行及び可食部への蓄積を低減する技術開発が求められている。
本研究では水稲の体内におけるセシウムの分配動態を明らかにし、玄米へのセシウム蓄積低減に向けた基礎的知見を提示する。
成果の内容・特徴
  1. 茨城県内試験水田にて栽培した「コシヒカリ」の成熟期各部位における安定同位体セシウム(133Cs)濃度は穂首(第一節間)で最も高い(図1)。カドミウム、ヒ素など他の多くの金属元素は節で高い濃度を示すが、節間に高蓄積する元素はセシウム、カリウムなど第1族元素の一部のみである。
  2. 福島県低汚染土壌を用いた4段階の異なるカリ施肥量のポット試験栽培において、カリ施肥量の減少に伴い各部位のセシウム濃度は増加する(図2)。いずれのカリ施肥量においても穂揃期から成熟期にかけて葉身の133Cs濃度は低下し、セシウムは登熟期に葉身から他の部位に転流すると考えられる。また上位節間では濃度が大きく増加し、増加程度は低カリ施肥条件で大きい。
  3. 福島県内汚染水田2カ所から採取した土壌を用いた8段階の異なるカリ施肥量のポット試験栽培において、わらに対する玄米の137Cs濃度比は栽培期間中の土壌溶液カリウム濃度が低いほど増加する(図3)ことから、カリ施肥量の減少はセシウムの玄米への分配を促進すると考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究は水稲品種「コシヒカリ」を用いた栽培試験の結果である。
  2. 適正なカリ肥培管理が行われない場合、水稲全体の放射性セシウム吸収が増加するのみならず、玄米への放射性セシウム分配割合も増加し、それらの相乗効果で玄米の放射性セシウム濃度が高まる可能性がある。今後の玄米への蓄積抑制対策における基礎的知見として活用できる。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nics/2018/nics18_s12.html
カテゴリ 水田 水稲 施肥 肥培管理 品種

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