タイトル | 新規植生指数を用いた小麦の穂水分推定からの成熟期の推定方法 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2015~2020 |
研究担当者 |
長澤幸一 辻博之 八田浩一 丹羽勝久 横堀潤 今田伸二 前塚研二 森井悠太 小川ひかり 秋江大雅 大楠秀樹 小松一彦 畠野尚章 田中智樹 平藤雅之 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 衛星リモートセンシング画像の青、赤、近赤外域の反射率を用いる、新規の植生指数IRVIは、小麦の穂水分の推定に有効であり、従来のNDVIによる「ゆめちから」の穂水分の推定では3か年の予測誤差が最大で8.0%であるのに対し、本法を用いることで4.1%に改善する。 |
キーワード | リモートセンシング、小麦、ゆめちから、植生指数、衛星 |
背景・ねらい | パン用小麦「ゆめちから」の適期収穫のために衛星による圃場の植生指数から直接穂水分を推定して成熟期を推定する技術開発が望まれている。現在、NDVIが植生指数として使用されているが、薄曇りや霧の影響等を受けて穂水分の推定の誤差が著しく大きくなる場合がある。そこで、本研究では大気中の水分の影響を緩和し、より精度良く穂水分の推定が出来る新たな植生指数の開発を行う。 |
成果の内容・特徴 | 1.撮影時期の異なるSPOT衛星画像6枚から算出した各種反射率と穂水分との関係は、赤域では負の相関が認められる(図1A)。近赤外域では同一画像内で反射率と穂水分とが正の相関を示したが、全体としては相関がなく、撮影時の大気等の影響が考えられる(図1B)。青域の反射率と穂水分との間にも相関は殆どないが、同一撮影日の反射率は近赤外域と相反する傾向を示すとともに、大気等の影響は近赤外域より明瞭に認められる(図1C)。青域の反射率を近赤外域に乗じると正の相関を示し(図1D)、撮影日の大気に由来する影響を緩和できる。 2.1の知見より青域を活用し、撮影日の大気の影響を緩和できる新規の植生指数IRVI(Improved Ratio Vegetation Index:IRVI=(B×NIR)/R(B:青域の反射率、R:赤域の反射率、NIR:近赤外域の反射率) )を創出した。 3.撮影時期の異なるSPOT衛星画像6枚から算出したIRVIと「ゆめちから」の穂水分との回帰式はNDVIのものよりも決定係数が顕著に高く、従来の有効とされているNDVIよりも高い精度での穂水分の推定が期待できる(図2)。 4.7月第1半旬から第3半旬の2カ年の衛星画像から求めた各植生指数と撮影日の穂水分から作成した穂水分推定式を用い、他の3カ年の「ゆめちから」の穂水分を推定した結果、穂水分推定値と実測値とのRMSEはNDVIを用いた場合は年次変動が大きく、衛星データが大気中水分の影響を受けたと考えられる条件(2016年)では最大8.0%である(表1)。これに対して、IRVIを用いた推定では、RMSEは最大で4.1%以下と安定している特徴を示す。 5.葉色の変化が顕著でない穂水分65%以上の高水分域において、NDVIによる推定ではRMSEが9.2%であるのに対し、IRVIでは4.1%のRMSEを保って推定ができる(表1)。したがって、IRVIは大気中の水分の影響が大きい条件で撮影された画像や、撮影適期の7月第3半旬以前に撮影された画像を用いて穂水分を予測する際に活用できる。 6.各植生指数による穂水分推定値から、穂水分が40%に達する成熟期を推定した検証においても、NDVIを用いる推定に比べて、IRVIを用いた推定の方がRMSEの変動が小さく、収穫期予測の安定化に寄与すると考えられる(表2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.本研究はSPOT衛星によるものである。他の衛星を使用する場合も同様に画像解析から青域、赤域、近赤外域の反射率を求めてIRVIを作成することが出来る。 2.NDVIから穂水分を推定するには、画像毎に穂のサンプリング、穂水分の測定を行って推定式を作成する必要があるが、IRVIを使うことでそれらの作業を省略できる可能性がある。 3.「ゆめちから」を穂水分30%以下の適期から収穫する場合は成熟期の3日後からと推定する(穂水分40%未満の穂水分の低下率を3.69%/日(杉川ら)とする)。 参考文献 杉川ら 秋まき小麦「ゆめちから」の高品質安定供給栽培法(2015) |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/harc/2020/harc20_s04.html |
カテゴリ | 小麦 リモートセンシング |