営農開始から約10年間の経営経済性を評価する周年親子放牧導入支援システム

タイトル 営農開始から約10年間の経営経済性を評価する周年親子放牧導入支援システム
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門
研究期間 2016~2020
研究担当者 中尾誠司
恒川磯雄
中神弘詞
平野清
佐々木寛幸
杉戸克裕
発行年度 2020
要約 繁殖牛頭数と草地の面積・条件、導入牛と販売子牛の価格、基本的技術係数など数項目を設定するだけで周年親子放牧開始後約10年間の家畜頭数と経済性(損益とキャッシュフロー)が試算できるシステムである。設定条件の変更により営農計画のシミュレーションが可能である。
キーワード 肉用牛繁殖経営、周年親子放牧、営農計画、支援システム、営農シミュレーション
背景・ねらい 国産牛肉への根強い需要や農山村資源の有効利用の観点などから和牛生産の拡大が期待されている。肥育素牛の供給拡大策として、繁殖経営部門において省力化とコスト低減の効果が極めて大きい周年親子放牧の導入は有力な方策であるが、現状では少数の事例にとどまっている。普及を促進するには、新規営農に向けた経営計画の策定が必要になるが、周年親子放牧の高い経済性についての静的営農モデルはあるが、営農開始以降の経営内容の経年変化を提示できるツールはない。肉用牛繁殖経営では、営農開始から規模拡大を経て所得が一定額に達し経営が安定するまでに長期間を要するので、動的な営農計画の必要性は特に高い。このための営農計画支援ツールを開発するとともに、草地の利用可能性を計算する作付け計画支援ツールと主な施設費を計算する牧柵整備計画支援ツールを連携させ、新規営農者にも使いやすい周年親子放牧導入支援システムとして提供する。
成果の内容・特徴 1.本システムでは、営農計画支援ツールにおいて毎年の家畜飼養と経営収支等の経営内容を試算する。その際、飼料費はシステムに組み込まれた作付け計画支援ツールにより算出する。草地の施設費については牧柵整備計画支援ツールにより精緻な計算ができる(図1)。
2.営農計画支援ツールでは、まず(1)繁殖率と事故率の前提条件を定め、繁殖牛の導入・自家育成と販売頭数等の10年間の飼養頭数を計画する。次いで(2)導入家畜と販売子牛の価格条件、1頭あたり流動費など少数の基礎的条件を定める。(3)経年の草地利用計画を立てる。草地の立地点(緯度経度の座標)を決めることで作付け支援システムにより草地の利用状況に基づいて自給飼料費と購入飼料費が計算され、10年間の経営収支等の暫定的な試算結果が得られる。さらに(4)技術係数、単価、資材、牧草種などの内容や前提条件を変化させることで経営収支のシミュレーションができる。この計算は様々な段階でその都度、再計算ができる。また、経営収支とともに借入金等を含むキャッシュフローの計算ができる。結果は表とあわせて主なものはグラフ提示される(図2、図3)。
3.策定した営農計画はシステム内でデータセットとして保存される。保存したデータを呼び出し、条件を変えて計算すればその都度新しいデータが作成される。主な計算結果はMS-エクセルの表形式で出力でき、これを利用して図表の作成や加工を自ら行うことができる。
成果の活用面・留意点 1.システムはパソコンにインストールして利用する。パソコンのOSはWindows10か同7を前提とする。利用マニュアルは周年親子放牧導入マニュアル成果集の1分冊として作成する。
2.使い勝手や表示等を改善する余地があるため、当初は試作版として希望者に頒布する。その後、農研機構のHPから自由にダウンロードできるものとする。
3.本システムでは経年的な試算を行うが、前提条件は期間を通じて変わらないため、価格や技術水準等の諸条件が大きく変化する場合などは結果の扱いに注意が必要である。
4.システム本体と内部の作成データは専用言語が用いられておりユーザー側では改変できない。
図表1 244647-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nilgs/2020/nilgs20_s03.html
カテゴリ 加工 規模拡大 経営管理 省力化 低コスト 肉牛 繁殖性改善

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