タイトル | 味標準液を用いた味覚センサによるトマト果汁の味強度評価法 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 |
研究期間 | 2018~2020 |
研究担当者 |
林宣之 氏原ともみ 早川文代 中野優子 川上智子 池崎秀和 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 酸味、甘味、うま味物質を含む標準液のセンサ出力値を基準として、トマト果汁におけるそれらの味強度を表す方法である。常に一定の基準値に基づいて評価されるため、結果の再現性に優れ、大量または試験時期が離れたデータ間の比較、異なった試験室間のデータ比較が可能になる。 |
キーワード | 味覚センサ、標準液、トマト、酸味、甘味、うま味 |
背景・ねらい | 食品の味を客観的に評価する手段として、味覚センサの利用がある。これは一般的には評価対象となる食品と同種の標準食品を用意し、そのセンサ出力値を基準として試料食品の出力値を求めることにより、試料食品間の味強度の相対比較を行う。しかしながら、この方法では同一の標準食品を調達することがしばしば困難になることから、大量のデータ間、評価試験時期が離れたデータ間、または異なった試験室間で取得したデータ間の比較が不可能となる。 そこで、これらの問題を解決するために、本研究では具体例としてトマト果汁(市販のトマトジュース)の酸味、甘味、うま味の強度評価を取り上げ、食品試料中の評価すべき味と同種の味を呈する物質を全て含む標準液を用いて、常に一定の標準液のセンサ出力値に基づいて食品試料のセンサ出力値を算出する方法を開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1.本法によるセンサ出力値は、試薬として市販されている高純度の味物質から調製される標準液の出力値に基づくため、味評価データは標準食品の出力値を基準とする従来法よりも高い再現性をもつ(図1)。本法の酸味、甘味、うま味センサ出力値の日内標準偏差はそれぞれ1.1 %、2.7 %、1.7 %、日間標準偏差はそれぞれ2.1 %、5.5 %、2.9 %である。 2.トマト果汁用標準液中の味物質の濃度は、評価対象となる食品中の主たる呈味成分の含有量を考慮して決定する。トマト果汁の場合は、22.0 mMクエン酸、177 mMグルコース、23.0 mMグルタミン酸一ナトリウムとなるように調製する。 3.試料のセンサ出力値(電位差)は、酸味と甘味については20%濃度差の味物質の出力値の差を一目盛とする無次元の値(味推定値)に変換される。一方、うま味に関しては44%濃度差を一目盛とする味推定値に変換する。味推定値の一目盛分の差は味強度に対するヒトの弁別閾を考慮して設定されており、味の強さを比較する際の目安となる。試料と標準液の味強度が等しい場合は、試料の味推定値は0(ゼロ)となり、試料の味強度が標準液の味強度よりも強い場合は正の値、弱い場合は負の値となる。本研究に用いたトマト果汁の各味推定値の範囲は、-2.2~4.8(酸味)、3.4~10.8(甘味)、0.1~2.6(うま味)となる(図2)。 4.トマト果汁の酸味および甘味へのセンサ応答(味推定値)は、ヒトによる官能評価による結果と良い一致を示す(図3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.本法では、従来法のようにセンサ出力値の基準となる標準食品試料が入手できなくなる心配はなく、大量のデータ間、評価試験時期が離れたデータ間、または異なった試験室間で取得したデータ間の比較が可能となる。 2.本法で用いた方法論は、他の食品に対しても適用が期待できる。その際、標準液を構成する各味物質の濃度は、日本食品標準成分表等のデータを参考にすることができる。 3.標準液のpHおよび電気伝導率は、評価対象となる食品におけるそれらの典型的な値から大きく逸脱しないように留意する必要がある。トマト果汁の場合、標準液のpHおよび電気伝導率はそれぞれ4.3および3.2 mS/cm、本研究の果汁試料のそれらは3.8-4.4および5.1-8.8 mS/cmである。 4.本研究で用いたトマト試料(市販の食塩無添加トマトジュース)のうま味に関しては、官能評価によるその強度の判別が困難であることから、センサ応答と官能評価との相関を証明することができない。官能評価が困難な理由として、図2が示すように、使用した試料のうま味強度範囲の狭さが挙げられる。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nfri/2020/nfri20_s08.html |
カテゴリ | トマト 評価法 |