ナミハダニの殺ダニ剤3種の抵抗性原因遺伝子変異の同定

タイトル ナミハダニの殺ダニ剤3種の抵抗性原因遺伝子変異の同定
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2014~2020
研究担当者 上樂明也
杉本直也
高橋彰央
伊原嶺
伊藤悠佑
Thomas Van Leeuwen
刑部正博
発行年度 2020
要約 野菜、花卉、果樹等の重要害虫であるナミハダニのミトコンドリア電子伝達系複合体II(SDH)阻害剤3種に対する強抵抗性は、それぞれ作用点であるSDH遺伝子上の変異を主要因とする。これらの変異は、遺伝子診断による簡易かつ迅速な抵抗性モニタリングに活用できる。
キーワード ナミハダニ、薬剤抵抗性、SDH阻害剤、アミノ酸置換、交差抵抗性
背景・ねらい 野菜、花卉、果樹等の重要害虫であるナミハダニTetranychus urticaeは、著しい薬剤抵抗性発達が世界的な大問題となっており、薬剤抵抗性管理による抵抗性発達遅延の実現が必要とされている。ミトコンドリア電子伝達系複合体II(SDH)を作用点とする殺ダニ剤3種(シフルメトフェン、ピフルブミド、シエノピラフェン)は殺ダニ剤全体の国内出荷量(2017年)の34%を占める基幹剤であるが、近年抵抗性の発達が報告されている。そこで、QTL解析および次世代シーケンサーによる網羅的発現遺伝子解析を行い、国内の抵抗性系統における抵抗性要因を特定する。これにより、遺伝子診断によるナミハダニのSDH阻害剤の抵抗性モニタリング技術の開発につなげる。
成果の内容・特徴 1.シフルメトフェン抵抗性とピフルブミド抵抗性のQTL領域は重複し、SDHのサブユニットの一つであるSdhBをコードする遺伝子が存在する。シフルメトフェン抵抗性系統(SoOm1_CflR)では一塩基の置換(点変異)により260番目のアミノ酸がイソロイシンからトレオニンに置換され(I260T変異)、ピフルブミド抵抗性系統(SoKg1_PflR)では点変異により260番目のアミノ酸がイソロイシンからバリンに置換されている(I260V変異)。これらのアミノ酸置換が各阻害剤に対する各抵抗性系統の強抵抗性(シフルメトフェン抵抗性系統の50%致死濃度は感受性系統の8528倍となり、ピフルブミド抵抗性系統では9174倍となる)の主要因と考えられる(図1)。
2.シエノピラフェン抵抗性のQTL領域には上記2剤と異なり、SDHのサブユニットの一つであるSdhCをコードする遺伝子が存在する。シエノピラフェン抵抗性系統(SoKg1_CyeR)では2塩基の置換により56番目のアミノ酸がセリンからロイシンに置換される(S56L変異)。このアミノ酸置換がシエノピラフェン抵抗性系統の強抵抗性(50%致死濃度が感受性系統の5882倍以上となる)の主要因と考えられる(図1)。
3.各抵抗性系統には、交差抵抗性(他のSDH阻害剤に対しても強抵抗性を示す)が確認されており、I260T変異は、シエノピラフェン抵抗性にも関与すると考えられ、I260V変異とS56L変異のいずれかまたは両方は、シフルメトフェン抵抗性にも関与する可能性が考えられる(表1)。
成果の活用面・留意点 1.同定した各変異は、ナミハダニの各SDH阻害剤の抵抗性個体を判別する遺伝子診断技術の開発に活用できる。
2.同定した各変異の知見は、既存のSDH阻害剤に対して抵抗性が発達したナミハダニに効果がある新規SDH阻害剤の開発等に貢献することが期待される。
3.同定した各変異の交差抵抗性への関与の有無については更なる検証が必要である。
図表1 244730-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2020/nias20_s18.html
カテゴリ 害虫 出荷調整 診断技術 抵抗性 モニタリング 薬剤

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