凍結保護剤処理の障害となるカイコ最外膜(卵殻)の薬剤処理による除去法

タイトル 凍結保護剤処理の障害となるカイコ最外膜(卵殻)の薬剤処理による除去法
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2019~2021
研究担当者 内野恵郎
冨田秀一郎
酒井弘樹
瀬筒秀樹
David Urbán-Duarte
戒能洋一
古川誠一
José Fernando De La Torre-Sánchez
発行年度 2021
要約 カイコ卵の最外層に位置する卵殻は受精卵凍結処理において障壁となっている。本方法は、薬剤処理により効率的に卵殻を取り除くとともに、除殻後の胚の培養条件を検討可能にする方法であり、今後、受精卵凍結保存の実現のための薬剤処理・培養条件を見出すことに繋がると期待される。
キーワード カイコ(Bombyx mori)、受精卵、卵殻、化学的除殻法、乾湿培養法
背景・ねらい 遺伝子組換えカイコを利用したバイオ医薬品開発では安定した品質を担保するための方策として凍結保存バンクのシステムの整備が必要とされている。カイコでは精子と卵巣による凍結技術は開発されているが、個体再生にはいずれも別の個体への人工授精や移植が必要である。一方受精卵凍結が可能となれば別の個体を必要とせず、操作上の負担も軽減できる。また、交雑を必要としないため元の個体および系統の遺伝子資源情報を完全に保持することができる。一般に生物組織や器官への凍結障害を抑えるためには凍結保護剤による処理が必要となるが、カイコでは卵表層の卵殻が障害となり凍結保護剤が内部に浸透しないという問題がある。手術用メス刃を用いて物理的に取り除く手法も行われているが、卵殻の内側の漿膜を傷つけずに取り除かなければならず高度な技術を必要とし、良好な状態の卵を多数同時に準備することはできない。そこで、本件研究は同時に多数の個体を簡単に除殻できる技術の開発と培養方法の改良を試みる。
成果の内容・特徴 1. 胚発生への影響を最小限に抑えつつ化学的に卵殻を除去し卵殻後の胚を培養し、しかも複数の卵を同時に処理することができる手法である(図1)。
2. 水酸化カリウムおよび次亜塩素酸ナトリウムの濃度・処理時間・処理温度による影響を調査し、発生に影響の少ない条件を見出すことができる。最適条件で処理した卵は漿膜を残した状態で卵殻のみを除去することができ良好に孵化できる(図2)。
3. 本研究で見出した除殻の条件および培養条件の組み合わせにより、pnd-w1およびw1(実験系統)、J137(実用系統)では、外科用メスによる物理的手法では除殻が難しい初期胚においても除殻が可能である。除殻した卵は次世代を産するための十分な受精能を有しているため、処理後の個体から次世代を生じることができる(図3)。さらに、従来の物理的手法では除殻できなかった発生初期の卵を用いても十分な生存率、受精能を有しており、初期の受精卵を用いての凍結保存技術の開発が可能である。
成果の活用面・留意点 1. 今回開発した除殻の方法は、複数の卵をナイロンメッシュ上に固定し、複数の試薬による処理と洗浄操作を容易に行うことができるので処理効率が高く、除殻やその後の培養の影響を容易に検定することが可能である。
2. 従来の手法では初期胚での除殻が非常に困難であったが、今回開発した方法で処理した個体は良好に生育し次世代を生ずることができる。また、開発した手法を記したマニュアルを用いることで誰でも良好な状態の除殻卵を得ることが可能となっていることから、個人の手技の熟練度に依存せず簡単に卵殻を除去できることで受精卵の凍結保存処理に必要な条件検討が可能となり、受精卵凍結保存成功への可能性が広がる。
図表1 249081-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nias/2021/nias21_s02.html
カテゴリ カイコ 薬剤

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