サツマイモ基腐病菌の動態解析法

タイトル サツマイモ基腐病菌の動態解析法
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 植物防疫研究部門
研究期間 2019~2021
研究担当者 野見山孝司
富岡啓介
中保一浩
発行年度 2021
要約 窒素源に硝酸を利用できないサツマイモ基腐病菌の硝酸利用能欠損変異株(nit変異株)と新規選択培地を組み合わせることで、環境中での基腐病菌の動態解析が可能である。早急な拡大・まん延防止対策が求められるサツマイモ基腐病の詳細な発生生態を踏まえた防除技術開発に貢献できる。
キーワード かんしょ、サツマイモ基腐病、選択培地、Diaporthe destruens、nit変異株
背景・ねらい サツマイモ基腐病は、病原性糸状菌Diaporthe destruens(基腐病菌)によって引き起こされ、茎やイモが褐変・枯死し、減収要因となる重要土壌病害である。現在、南九州・沖縄地域で被害が深刻化しており、全国へのさらなる感染拡大も懸念されることから、基腐病菌の発生生態を解明し、本菌の特性に応じた効果の高い防除技術の早急な開発が求められている。
そこで、本研究では土壌や植物体での基腐病菌の動態解析を可能とする栄養要求性変異株を作出する。窒素源として硝酸を利用できない硝酸利用能欠損変異株(nit変異株)と選択培地を組み合わせることで基腐病菌の動態解析法を確立する。
成果の内容・特徴 1. 本nit変異株は、宮崎県の罹病植物より分離された基腐病菌F3株およびF6株を親株に持つ、硝酸を利用できない非遺伝子組換え型の栄養要求性変異株である。本変異株は硝酸塩と構造が類似した塩素酸塩を含む最少培地上で培養することにより作出される。塩素酸カリウムを含む培地上では、親株は塩素酸を有毒な亜塩素酸に変換して死滅するのに対して、本変異株は亜塩素酸塩に変換できず塩素酸塩耐性能を有するために生育できる(図1)。
2. 本変異株をかんしょ苗の茎基部に有傷接種すると、接種部位付近では親株と同等の褐変した病徴が発現する(図2)。これにより、本変異株を用いた発病試験が可能となる。
3. サツマイモ煎汁に塩素酸カリウム、クロラムフェニコール、ペンタクロロニトロベンゼン(PCNB)を添加する塩素酸カリウム‐クロラムフェニコール‐PCNB加用サツマイモ煎汁ブドウ糖寒天培地(SPDCA-CP培地、表1)上では、本変異株は茶褐色から黒褐色で菌糸伸長が抑制されたコンパクトなコロニーを形成し、他の環境微生物コロニーとの識別が可能である(図3)。SPDCA-CP培地を用いると、土壌や植物体などの環境中から本変異株を選択的に検出でき、基腐病菌の動態解析を行える。
成果の活用面・留意点 1. 本動態解析法では、人工接種した土壌や植物体からnit変異株の特異的な検出により、土壌消毒技術の消毒効果の判定、土壌中での分布状況の解明や残渣中での生存状態の確認などが可能になる。
2. 本変異株の使用後は、植物体や実験器具などをオートクレーブや化学薬品などで適切に消毒する必要がある。
3. 供試サンプル中にSPDCA-CP培地における生育能が高い環境微生物が存在すると、本変異株の検出が困難になる場合がある。
図表1 249122-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nipp/2021/nipp21_s09.html
カテゴリ かんしょ 土壌消毒 防除

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