課題名 | a.地域の条件を活かした水田・畑輪作を主体とする農業経営の発展方式の解明 |
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課題番号 | 2010014827 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,北農研,北海道農業経営研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,東北研,東北地域活性化研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,農業経営研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,近農研,地域営農・流通システム研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,異業種連携研究チーム |
協力分担関係 |
岩手農研 宮城農総研 岩手県立大学 |
研究期間 | 2006-2010 |
年度 | 2010 |
摘要 | 地域農業構造変動予測手法の開発については、1)21年度構築の地域農業構造変動予測手法の精緻化、すなわち、類型別営農モデルの作成を通して、育成すべき担い手経営数の確保や耕作放棄地の発生を回避しつつ、地域全体の収益を最大にする地域農業計画案を策定できる手法を開発した。2)21年度開発の農家就業選択行動予測モデルを改良して農家世帯主の就業選択行動(就農か農外就業か)を分析し、九州は経営面積の大きさが、東北、四国は農業補助金の措置が比較的大きく影響していること、北陸、近畿、中国の都市部は就農傾向が他地域より弱いことを明らかにした。 大規模水田作・畑作経営の戦略的経営方式の解明については、1)23年度から本格実施される畑作戸別所得補償を反映させた長期営農計画モデルを逐次線形計画法で策定し、今後の低コスト化に不可欠となる規模拡大方法としては、貯借率100%以内で自己資金1.5千万円の36ha経営の場合、農地購入と借地を併用し、借地を順次購入する手順が農家経済余剰の確保の点で最も有利となることを明らかにした。2)集落営農組織のモデル分析により、不耕起播種機を利用した稲・麦・大豆2年3作は、慣行の稲・大豆2年2作と比較して経営全体の収益の約20%向上、麦-大豆の二毛作による労賃配当の約30%増加等のメリットを有していることを明らかにした。 生産・財務・販売データ情報を統合した意思決定支援システムの開発については、1)20年度までに開発の農業経営意思決定支援システムに組み込んでいる財務分析の実用性を高めるため、日本公庫の融資先データを用いて、農業法人の財務状況を評価できる経営類型別の標準財務指標値とそのランク水準を策定した。 土地利用集積・調整支援手法の開発については、1)水田作経営者に対する借地選好分析による農地集積予測手法(21年度開発)を組み込み、農地の面的利用調整の手順や留意点を整理したマニュルを策定した。 新規参入・経営継承のための経営者能力・人材育成手法等の開発については、1)構成員以外の外部からの加入者が法人役員・代表となっている畑作・畜産、水田作の先進法人を分析し、外部加入者の増加を図るため、(1)研修中の出資用積み立て、(2)退職者の農地の一定期間借入後の法人による計画的購入、(3)構成員子弟でも敢えて研修生として従事・出資させる等の取り組みにより、家単位の法人運営から個人単位の運営へと転換が図られ、非農地所有者でも法人経営に参加できる方向で組織の運営改善が図られていることを明らかにした。2)農作業のノウハウを経営内で後継者や従業員に受け渡すために、21年度に構築した熟練者からのノウハウの摘出手法に、さらに、マニュアルやナレッジマップ、技能分析表を用いた形式知化や、形式知の提示、指導・体験、実践の段階からなる手順を追加し、農作業ナレッジを受け渡す手順・方法として構築した。 多様な主体間連携による地域営農システムの解明については、1)中山間地域における集落営農法人の広域的連携による地域支援システムとして、JA管内の全集落営農法人が参加し、大豆コンバインの共同利用や、地元実需者との連携により生産と販売を一体化する産地の仕組みを提示するともに、このシステムによって小規模な大豆作の低コスト化が図られ、収量変動リスクを考慮しても収支を黒字にできることを明らかにした。2)産地システムの中核となる農産物直売所の価格条件・販売可能量に卸売市場の価格条件を組み合わせることで、複数販路を考慮した経営改善案を策定できる生産・販売計画モデルを作成した。 異業種連携による地域活性化方策の解明については、1)黒大豆新品種「クロダマル」の普及を目標に、大豆取引制度、直接取引支援ツール「Soya試算シート」、産地化に向けたコンソーシアム形成のポイント等を解説した「クロダマル産地化支援直接取引支援マニュアル」を刊行するとともに、Webサイトにも公開した。2)異業種連携の形成には生産者・食品企業等の役割の明確化や、意思疎通と情報共有が可能なコンソーシアムの形成を通して新品種の産地化と商品化を同時に進めることが効果的であること、また、コーディネート機能として、生産者と食品企業の情報の乖離を解消することを通じてWin-Winの関係の構築・支援が求められること等の知見に基づき、生産組織と食品企業のマッチングおよびコンソーシアム形成を支援した。その結果、大豆品種「クロダマル」の生産地は平成20年の1.5haから、九州3県計38haに増加し、食品加工企業5社が商品化を行うに至った。 |
カテゴリ | 加工 規模拡大 経営管理 人材育成 新品種 水田 大豆 中山間地域 低コスト 二毛作 播種 品種 輪作 |